東京都港区や中野区、台東区などで学校の上履きを廃止する動きが広がっています。戦後から続いてきたバレエシューズタイプの上履き。これらは日本独自の習慣で、「子どもの足の成長に悪影響を及ぼす」と専門家たちは警鐘を鳴らします。保護者が知っておくべき子どもの足の成長と上履きの関係について、医師に伺いました。

MENU 成長期の子どもの足に大きな影響が…フットケア医が警鐘 抑えがゆるく足の指が圧迫されて変形 サイズの不適合で外反母趾に 9割以上の児童、足の小指が変形!? 真っ黒で破れた上履きを平気で履く子も ペラペラの薄い靴底では災害時の避難が難しい

成長期の子どもの足に大きな影響が…フットケア医が警鐘

「いわゆるバレエシューズタイプの上履きは、あまりにも子どもの足にとって影響が大きいです。ローファーもそうですが、成長期の子どもたちの足が心配です」

と指摘するのは、済生会川口総合病院の皮膚科医でフットケアを専門とする高山かおるさんです。高山さんは足育研究会の代表を務め、たくさんの子どもたちの足を診てきました。

 成長期真っ盛りの小学生たちが、1日で最も長い時間履くことになる上履き。足の健康を考えると、丈夫でフィットしたものを選ぶ必要性があります。でも多くの学校で採用されている安価なバレエシューズタイプの上履きは、足の成長を考慮した構造にはなっておらず、つくりは1950年代からほぼ変わっていないそうです。

抑えがゆるく足の指が圧迫されて変形

 高山さんによると、シングルゴムやVゴム(足の甲に三角形のゴムがあるタイプ)は留め具としては柔らかすぎるため、スリッパのように靴の中で足が動き、指先が押し込まれて圧迫されます。それが土踏まずのつぶれや、指の変形につながるそうです。

「子どもの足、特に低学年の足はまだ軟骨が残っていて柔らかいです。お肉の中に骨があるようなイメージです。これから大きくなる足にとって、骨がくっつかないうちに骨が適切な場所に入ることがすごく大切です。小学生はその最後の期間になります。その成長期に何の抑えにもならない、かかとのパカパカした上履きを履くのは足の保護にしかなりません」

サイズの不適合で外反母趾に

 サイズが合わない靴を履き続けることにも問題があるようです。上履きによっては、21センチ未満は1センチ刻みしかサイズがないものもあります。

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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