「サイズが1センチ刻みとなると、低学年以下の子どもはサイズの不適合が起こりやすくなってしまいます。さらに指定の上履きの足囲(親指つけ根の出ている部分〜小指つけ根の出ている部分の長さ)の規格は2Eですが、合わない子もたくさんいます。でも子どもの足は柔らかいので、サイズがきつくてもゆるくても履けてしまうんです。柔らかい足で不適合なサイズを履くと、外反母趾(がいはんぼし)が多くなるという調査結果もあります」(高山さん)

埼玉県内のある小学校を調査した結果、小指が変形している児童は9割を超えた=足育研究会提供

9割以上の児童、足の小指が変形!?

 高山さんらが埼玉県内の小学校の児童181人の足を調査した結果、足の指の変形や深爪など、約98%の児童に何らかの異常がみられ、そのうち約91%の児童は小指が変形していたそうです。

「子どもたちの足を見ると、小指がほぼ曲がっているんです。内側や横向きに曲がっています。先天的なケースもありますが、それにしてもたくさんの子が曲がっています。成長しなくてはいけない時期に、一番長い時間、バレエシューズタイプの上履きを履いていることが影響していると考えられます。さらに今の子どもたちは昔に比べて運動不足です。鬼ごっこや野山を駆けめぐる足裏の刺激になる運動遊びが不足しています。そうした運動が足りていない子どもたちが、より不適合な靴の影響を受けやすくなっているのだと思います」

真っ黒で破れた上履きを平気で履く子も

 上履きナシで土足で教室に入る「一足制」にすると、床の衛生面を懸念する声もありますが、高山さんは真っ黒に汚れた上履きを履き続けることによる、足の衛生面を心配しています。

「子どもたちの上履きは、ものすごく汚れています。特に高学年や中学生になると、だんだん週末に持ち帰らなくなる子も目立ってきます。そうなると親の目は行き届きません。なかには布やゴム底が破れたままの上履きや、インソールまで真っ黒に汚れた上履きを履いている子もいます。

 日本人は基本的にきれい好きなはずですが、上履きに関してはそうとも限らないようです。こういう不衛生な上履きを履く習慣が、大人になったときの足のトラブルにつながります。今、日本人の水虫は6人に1人といわれていますが、それは足がきちんと洗えてないということが背景にあります。靴の中の菌は、靴下を履いていても足につきます。不衛生でいると皮膚を通して感染症が起こります。こうした不衛生な習慣は、上履きから始まっていると感じることが多いです」(高山さん)

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