苦しさを抱える子どもたちに寄り添い、子どもたちが主題の学習への転換を進める石川県加賀市の島谷千春教育長(左)と神奈川県鎌倉市の高橋洋平教育長(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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 教育現場ではいま、「学びの転換」が進められている。受け身の授業から、子どもが自ら学ぶ「学習者中心の学び」へのシフトだ。40代の若手教育長が進める改革から、苦しさを抱える子どもたちに寄り添う学校の姿が見えてきた。神奈川県鎌倉市教育長・高橋洋平さん、石川県加賀市教育長・島谷千春さんが語る。AERA 2024年12月9日号より。

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──なぜ、今、学習者主体の学びへ転換する必要があるのでしょう。

島谷:背景の一つ目は、AIの台頭など従来の価値観が通用しなくなる時代に、一斉型の受け身の授業だけでは、変わり続ける社会に対応できず、新たな価値を創造する力が育たないからです。二つ目は、発達障がいや外国のバックグラウンドを持つ子が増える中で一斉型の授業が立ち行かなくなっていること。今を生きる子どもの苦しさから、「みんな一緒に同じことを同じ方法で」の教育は限界だと感じます。

高橋:不登校の小中学生は昨年度全国で約5万人増えました。不登校の理由はさまざまですが、子どもたちの学びの特性・個性と従来の一斉指導が合わず、学校に行けない子が増加しているのではないかと推測しています。鎌倉市では鎌倉の海や森で“遊ぶように学ぶ”「ULTLAプログラム」を実施してきました。ここでは学校に行けない子どもたちも、個性に応じた学び方で学びに向かう力を高めています。また、来年の4月からは「学びの多様化学校」(いわゆる不登校特例校)を開校します。通常の授業時間を圧縮・柔軟にし、新教科ULTLAをコアカリキュラムにします。そして、この学校は「学校に行けないから仕方なく来る場所」ではなく、学習者中心の学びを推進し、市内全域にいい影響を与える「多様な学びの場」のひとつと位置付けます。

島谷:不登校と一口でいっても、週4日ほどは学校に来ている子から全く外出できない状態の子まで、その実態はさまざまです。そのため、不登校日数の長さの度合い別に子どもをリストアップし、各層それぞれに支援の隙間が出ないように、極力「細分化」して考えるようにしています。鎌倉市でも挑戦しているように多様な選択肢を作ることが重要ですよね。加賀市では、校内にホッとできる部屋を設け、支援員を配置。児童館での居場所やメタバース空間もあります。

石川県加賀市教育長・島谷千春さん(しまたに・ちはる)/横浜市出身。2005年に文部科学省へ入省し、初等中等教育、研究振興、国際関係などを担当。2017年より横浜市教育委員会へ出向。教育振興基本計画策定や学校の働き方改革、教育・福祉連携などの業務に従事する。2021年より内閣府科学技術・イノベーション推進事務局にて、「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」の取りまとめやスタートアップ事業に携わる。2022年10月より現職。(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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子どもが自ら学び方や学習ペースを決める授業