プロ野球選手を引退した直後に個人事務所を設立し、タレントに転身した一茂だが、当時、明石家さんまが自身のレギュラー番組に呼んでチャンスを与えることで、タレントとしての足掛かりをつかんだ。スポーツ紙の芸能担当記者はこう語る。
「タレントとして駆け出しだったころの一茂さんは、さんまさんのほぼすべての番組でチャンスをもらい、芸能界の基礎を学んだと語っています。“明石家さんま道場”でバラエティー番組のコツをつかみ、スターダムにのしあがった人は何人かいますが、一茂さんはそのなかでも最も成功しているひとりと言えるでしょう。今の段階からもうひとつ突き抜けられたら、60代になるころには最強のタレントになっているはずです」
■実は野球選手としてもすごかった
一方、私生活では父との関係も包み隠さず公表している。放送作家は言う。
「実の家族とは長い間疎遠になっていて、特にお父様とは10年以上も絶縁状態にあると本人が明かしています。国民的ヒーローの息子ということでかなり恵まれた環境で育ったと思われがちですが、偉大な父親の息子ゆえの苦労も多かったようです。幼いころから周囲の注目や期待、プレッシャーは相当だったでしょうし、父親に擦り寄ろうとして自分におべっかを使ったり、小遣いを渡そうとしたりする大人に対して幼心に不信感を持ったことも過去に話しています。子どものころからこうした複雑な環境に置かれたことで鋭い観察眼が培われ、独特の価値観、人間味が形成されたのではないでしょうか。槙原寛己さんや古田敦也さん、デーブ大久保さんらプロ野球時代にチームメートだった人たちが一茂さんに好意的なのも、単なるボンボンではない、こうした裏の苦労を知っているからでしょう」
芸能評論家の三杉武氏は、一茂についてこう述べる。
「プロ野球選手としては大成せずに終わった印象を持つ人も多いかもしれませんが、そもそもプロ入りしたこと自体がすごいですし、大学時代にはオールジャパンに選ばれ日米野球やアジア選手権にも出場しています。古田敦也さんをはじめ、その才能や運動神経の高さを評価する野球人は多いですよ。最近ではバラエティー番組はもちろん、元プロ野球選手の先輩や同僚が配信しているYouTubeチャンネルのゲストに登場してトークを披露する場面も増えていますが、話が非常に面白く、聴き応えがあります。意外な博識ぶりも垣間見られ、非常に頭の回転が速く、サービス精神旺盛な人だなという印象です。今後もテレビ界は彼を放さないでしょう」
単なるおぼっちゃまではない、苦労してつかんだポジションと努力の才能が、今の一茂の人気を形づくっているのだろう。
(藤原三星)