「~の壁」「シン~」「2.0」……。ベストセラーが出ると、それに追随するように 同じようなタイトルを冠した書が出る。2匹目、3匹目のドジョウを狙って似たタイトルをつけるのか、それとももっと深い意味があるのか。AERA 2024年11月11日号より。
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ベストセラーのタイトルについて、2004年創刊の日刊書評メルマガ「ビジネスブックマラソン」編集長で、数多くのベストセラーをプロデュースしてきたエリエス・ブック・コンサルティングの土井英司さんに聞いた。
「新書もビジネス書も根本は変わらないと思います。最近のベストセラーの傾向としてタイトルはベーシックなものが多いようです」
土井さんは読者が若い層に入れ替わっているからだと説明する。ネットの情報を深く知りたいと考えたり、ネットで発信する場合、浅い知識でツッコまれることを恐れて、確かな内容を求め書籍へ手を伸ばす傾向があるそうだ。そのためわかりやすいタイトルが受けている。
似たタイトルの本が次々出てくるのは、一つ目が2匹目、3匹目のドジョウを狙うという商業的理由、二つ目は「シン」や「2.0」のように時代を捉えた言葉がタイトルになるため、三つ目が人間の本質的欲求をついている言葉であるためだという。
商業的理由は柳の下には何匹もドジョウがいると考えるからである。これまでも『超一流の雑談力』(安田正)を機に、「超一流」が流行り、「すごい~」「~をまとめてみた」などがある。
時代を捉えた言葉とは、その時代を映した言葉がタイトルになったケースだ。『バカの壁』(養老孟司)が発行された当時は格差が問題になっており、二者を対比する本が売れた。『頭がいい人、悪い人の話し方』(樋口裕一)もその一つ。
「二つの差を“壁”という言葉で捉えたところが、時代を映した絶妙なタイトルですね」と土井さん。
「人間の本質的欲求をついているのは『賢くなりたい』とか、『お金持ちになりたい』など、自分をアップグレードしたいと考えている人に向けたタイトルです。ネットの断片的な情報を見て、体系的に知りたいという欲求に応えた『~大全』などもベストセラーになりました」
「なぜ~」は新書で多く使われるタイトルで、最近では『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆)もベストセラーになっていると土井さんは解説する。