歓迎行事を終え、回廊を歩く皇后雅子さまと米トランプ大統領夫人のメラニアさん=皇居・宮殿で(代表撮影)
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 海外の賓客や要人と親しく交流し、人間関係を築くのも皇室の役割のひとつだ。そんな皇室の「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2019年6月4日に掲載された記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

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 5月27日午前9時過ぎ、皇居・宮殿の南車寄せで天皇陛下(59)と並ぶ皇后雅子さま(55)は、アイボリーの三つボタンのスーツに同じ色の帽子、真珠のネックレスをされていた。陛下の左隣に立ち、トランプ大統領(72)と妻のメラニアさん(49)を待っていた。

 夫妻が到着し、真っ赤なネクタイをした大統領が陛下と握手をする間に、雅子さまは陛下の右隣へと移動した。陛下との握手を終えた大統領は、次に雅子さまと握手を交わした。大統領はまっすぐ手を伸ばして雅子さまと向き合う形になったので、そのために移動されたのだとわかった。

 東庭での歓迎行事の間も、会見する「竹の間」への移動でも、雅子さまは隣にいるメラニアさんに折に触れて声をかけられた。

「こちらですよ」
「前に進みましょう」

 聞こえてきたわけではないが、メラニアさんが慣れない儀式で戸惑わないよう、そんなふうに気配りの声をかけているように見えた。

 10センチは優にありそうな真っ赤なピンヒールを履いたメラニアさん。真っ白なワンピースだったから、日の丸を意識したのかもしれない。そんなメラニアさんに、雅子さまは何度も右手を差し出した。腰に手を回すようなしぐさで、堂々とした中に優しさの感じられるエスコートぶりだった。

 会見は音声なし、映像だけの中継だったが、雅子さまとメラニアさんの後ろに座った通訳が手持ち無沙汰にしていたから、雅子さまが英語で話したことがわかった。

 宮中晩餐会でも雅子さまは、お疲れの様子もなく、はじけるような笑顔を何度も見せた。

 ノースリーブのロングドレスに透ける素材のロングスリーブを重ね、そこには花があしらわれていた。アメリカの国花のバラで、相手の国を思ってのことであり訪問国の国花をあしらった装いや国旗を基調にした装いをしていた美智子さまの心を引き継がれたもの。そう解説するテレビ局もあった。

 NHKの午後7時からのニュースは晩餐会を中継したのだが、始まるまでの時間、陛下と雅子さまのあるエピソードを紹介していた。午前中の会見で行われた「御贈進品」の交換で、トランプ大統領から陛下に80年以上前に作られたビオラが贈られた。その際、雅子さまが「今夜、お弾きになられたら」と言ったというのだ。

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