全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年11月11日号にはレッドホースコーポレーション 商品開発部部長 工藤達哉さんが登場した。
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九州でナンバー1の売り上げと評判の「道の駅むなかた」(福岡県宗像市)。開発部長として、大ヒットの「ブリ大根」など70品以上のオリジナル商品を生み出し、売り上げに大きく貢献した。
その経験と手腕を別の自治体でも生かそうと現在の会社に移り、地域の特産物を使った加工品づくりに挑戦している。道の駅などで販売するため、約30の自治体と50以上の商品を開発中だ。
「全国を飛び回って自治体や事業者に話を聞くと、その地域ならではのいいものがたくさんある。本来のいいものにちょっとしたアイデアで付加価値を生み出すのが私の仕事です」
少し前まで自治体からの要望で最も多かったのは米を使った加工品の開発だった。今夏スーパーなどで米の品薄が一時深刻化したが、そもそも国民1人当たりの米の年間消費量は落ち込んでいる。
ブランド米を使った「生米パン」を青森県鰺ケ沢町と秋田県男鹿市でそれぞれ作り、地元の道の駅などで販売している。
JA津軽みらい(青森県)とは規格外のリンゴを使った「りんごのティラミス」を開発し、販売を開始。味付けジンギスカン発祥の地とされる北海道滝川市とは電子レンジで温めるだけで簡単に食べられる「ジンギスカン丼」を企画し、近々発売する。
余剰の収穫物や規格外の農産物などを材料として積極的に活用することで、一次産業に携わる人たちの収入アップややりがいにもつなげたい考えだ。
豊富なアイデアはどこから生まれるのか。「一次産品を作っている農家や漁業者をはじめ、加工品にする工場の人など地元の人との幅広いコミュニケーションは欠かせません。どんな人のアイデアも否定せず、どうやったら実現できるかをみんなで考えます」
どこにでもある商品では売れないが、奇抜すぎる商品も売れない。消費者に時間と労力をかけてまでその商品を買おうと思わせるためには「ここでしか買えない味」を実現するしかないという。
「みんなが心を一つにして地域を象徴する商品を作り上げ、その商品に愛情を注げば最後はうまくいくと信じています。新しい地場産品の開発が地域の稼ぐ力、地域を元気にするきっかけになることを目指しています」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2024年11月11日号