著者 福田尚弘(ふくだ・なおひろ)1958年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。コンピューター関連教材の企画・制作、学習塾の経営を経て、学習参考書の企画・編集を行う。著書に『10才までに覚えておきたい ちょっと難しい1000のことば』『中学受験 必須難語2000』『高校受験 難語1500』『最低限の日本史』『大学受験 英単語block2500』などがある
著者 福田尚弘(ふくだ・なおひろ)
1958年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。コンピューター関連教材の企画・制作、学習塾の経営を経て、学習参考書の企画・編集を行う。著書に『10才までに覚えておきたい ちょっと難しい1000のことば』『中学受験 必須難語2000』『高校受験 難語1500』『最低限の日本史』『大学受験 英単語block2500』などがある
この記事の写真をすべて見る
『12才までに世界を広げる ちょっと難しい2500の日常語』(アーバン出版局)マンガ まつだしょうご宮崎県出身、徳島県在住。イラストレーター。得意なジャンルはギャグマンガ、かわいい系・ポップ系の動物やモンスターのイラストなどマンガ うじなかずひこ広島県在住。広告漫画家。日本イラストレーター協会会員。広島県職員として数々の教育関係機関に勤務後に転身。「『親の力』をまなびあう学習プログラム」開発検討委員会委員なども経験する。行政機関や企業広告等で使用する漫画を多数執筆
『12才までに世界を広げる ちょっと難しい2500の日常語』(アーバン出版局)
マンガ まつだしょうご
宮崎県出身、徳島県在住。イラストレーター。得意なジャンルはギャグマンガ、かわいい系・ポップ系の動物やモンスターのイラストなど

マンガ うじなかずひこ
広島県在住。広告漫画家。日本イラストレーター協会会員。広島県職員として数々の教育関係機関に勤務後に転身。「『親の力』をまなびあう学習プログラム」開発検討委員会委員なども経験する。行政機関や企業広告等で使用する漫画を多数執筆

 子どもの語彙(ごい)力を“能動的”に増やすための、新しいタイプの国語学習参考書が発行された。『12才までに世界を広げる ちょっと難しい2500の日常語』(アーバン出版局)は、多くの小学生や保護者などから人気を集めている。

 この本は、小学生全般を対象とし、少し難しい日常の語句を、楽しみながら身につけるためにつくられたものだ。『ちょっと難しい1000のことば』(同アーバン出版局)シリーズの「レベル1」(低・中学年向け)と「レベル2」(中・高学年向け)に、新たな500語句を加えた2500語句が紹介されている。

 「子どもが、読みたいと思うような学習参考書をつくりたかったのです。そのためにもマンガやクイズ、豆知識なども豊富に入れ、楽しめる工夫をしました」という著者の福田尚弘さんに話を聞いた。文字とマンガの構成で、盛り込みたい語句を盛り込むと、ページ数が増え(432ページ)、約3センチの束(つか)になったという。

■コミックと同様の仕様

 小学生を対象にした参考書の中で、これほどの厚みがあるものはあまりないため、当初は「分厚過ぎるのではないか」「子どもに敬遠されるのではないか」などの意見があった。しかし、福田さんの企画は逆だった。厚みはコミックを意識してのことなのだ。実は『コロコロコミック』と同様の仕様になっている。子どもは厚いコミックが好きで、厚ければ厚いほどうれしいのだ。判型に加え、紙質もあえてコミックの用紙に近づけ、慣れ親しんでいるコミックらしさと軽さもポイントになっている。「用紙が安っぽい」などといわれることがあるが、書籍で使用する一般的なものよりも高価なのだという。

 それぞれの語句は、英語でも表記されている。子どもはもちろんのこと、親にも読んでもらいたいという福田さんの意図する部分である。子どもにとっては、今後学ぶことになる英語に目で慣れておくため。親にとっては「この語句は英語で何というのだろう」と思った場合のことを想定してのものなのだ。

 語彙にはレベルがある。福田さんは「じっくり学習モード(レベル1)」、「発展学習モード(レベル2)」と分類している。しかし、そのレベルを章立てなどをしてページで分けるのではなく、同ページの上下段に並行掲載する。初めは上段のレベル1を見ているが、徐々に下段のレベル2にも目がいくようになる。また、レベル2を見ていても、意外にレベル1の知らなかった語彙を発見したりする。同ページに複数のレベルが併存し、自然に「パラレル学習」をすることができるのだ。

■まず日本語をしっかり学ぶ

 福田さんは国語を中心とした学習塾も経営していたが、授業を通して最も感じたことは子どもたちの語彙の少なさだった。主に中学受験生を教えていたが、読解することができない、記述することができない中・高学年が多かった。中学生になると英語を勉強し始めるが、英単語を能動的に覚えなければ読解することはできない。それと同じことを国語でやる必要があると思ったという。語彙を増やすためのオリジナルのプリントを作成し、毎回の授業ではドリルという形で始めた。それが膨大な量になり、一冊の本にもまとめたことがある。

 子どもの語彙力・国語力を養うためには(1)家庭のコミュニケーション環境(2)幅広い分野の読書と世界への興味・関心(3)辞書をまめに引く習慣 が挙げられる。特に(1)である。家庭内で親が子どもから引き出してあげる、つまり、話を聞いてあげることが非常に大事なのだ。親子のコミュニケーションができていれば、必然的に自分からも表現する。中学年くらいになると、へ理屈を言い始めることがある。そのときに親は「やった!」と思った方が良いのだ。大人はくだらないと感じることもあるが、子どもは自分で考えて伝えようとしている理屈である。ロジックを組み立てているのだ。

 英語などの外国語以前に、まず日本語をしっかりと学びたい。マンガやクイズ、豆知識で楽しみながらページをめくり、語彙に目で慣れ、意識することから始めてみる。無理をして暗記するのではなく、その語彙の意味が理解できる程度に覚えるのだ。見たことがあれば、前後の文脈から類推し、それが徐々に身についてくる。レベルを選ばず、気ままにめくってページ全体に目を通す「ランダム学習」もおすすめである。すき間時間にパラパラめくる! 語彙を増やす! 世界を広げる! ことだ。(朝日新聞デジタル &M編集部 加賀見 徹)

『sesame』2016年7月号(2016年6月7日発売)より
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18128