AERA 2024年10月21日号より
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 物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年10月21日号より。

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 さて、前回の続きである。

「NISAで株式投資を始めれば、40年後に退職するときには資産が増えていますよ」

 疑う余地のなさそうなこの言葉には「先入観のワナ」が潜んでいるという話をした。そして、株価変動の要因は、「企業の業績」と「投資家の需要」という話だった。

 まず、一つ目の「企業の業績」。これは日本全体の消費がどれだけ伸びるかに左右される。消費される金額は「消費量×物価」で決まる。「株式投資はインフレ(物価高)対策になる」という先入観には、「全体の消費量が変わらない、もしくは増える」という前提が隠されている。たとえ物価が上がっても、全体の消費量が減少すれば、企業の業績は悪化し、株式投資がインフレ対策として機能しない可能性があるのだ。

 ここで重要なのが、日本の人口減少だ。国立社会保障・人口問題研究所の人口将来推計(死亡率中位出生率低位)によると40年後の日本の人口は今から3割減って8680万人になると予想されている。この減少分を補うためにはどうすればいいだろうか。

 1人当たりの消費量を増加させるのには限界がある。昭和の高度成長期にならいざ知らず、物質的に豊かになった現代の日本社会ではそこまで増やすことはできない。

 輸出を増やす手もあるが、ハードルは高い。消費以外に設備投資もある。しかし、消費が増えないのに設備投資を増やすことは考えにくい。

 そして、仮に消費や設備投資を増やしたとしても、それらを生産する能力はあるだろうか。農業でも介護でも今後もあらゆる分野で人手不足は続いていく。地方にいくほど問題は深刻になるだろう。

 現在7350万人いる日本の生産年齢人口(15〜64歳)は、40年後には4510万人と4割近くも減少するそうだ。つまり、今と同じだけの生産量を維持するためには、これまで10人で行ってきた作業を6人でこなさないといけなくなる。工業製品ならAIや機械化の進展で対応できるかもしれないが、介護などのサービス業の分野では大きな課題だ。

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