リモノ・プロトタイプ01に乗った伊藤慎介社長(左)と根津孝太取締役 Photo by Eijiro Hara
リモノ・プロトタイプ01に乗った伊藤慎介社長(左)と根津孝太取締役 Photo by Eijiro Hara
開発は「おっさんたちが徹底的にカワイイにこだわった」(伊藤氏)。車体は布地で着せ替え可能
開発は「おっさんたちが徹底的にカワイイにこだわった」(伊藤氏)。車体は布地で着せ替え可能
ハンドルはバイクや自転車と同じバーハンドル
ハンドルはバイクや自転車と同じバーハンドル
表1
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 元経産省の官僚と元トヨタ自動車のデザイナーが立ち上げたベンチャーが、新しいコンセプトの車を発表した。だがこのクルマ、いまのままではなんら制約を受けずに公道を走ることができない、それはなぜか。

●スローでちっちゃく、かわいいクルマを創る

 二人が立ち上げたベンチャーの名は「株式会社rimOnO(リモノ)」。元官僚の伊藤慎介氏が代表取締役社長、元トヨタの根津孝太氏がデザイン、技術責任担当の取締役を務める。ニューコンセプトカーの正式名称は「rimOnO プロトタイプ 01」(以下、リモノ)だ。

 2人が出会って「何かやろうと」意気投合したのが、2014年2月ごろ。約2年をかけて、ようやくこのプロトタイプの発表にこぎつけた。東京は表参道の狭い路地で催された発表会には、当人たちの予想上回る報道陣が詰めかけた。

 リモノは電気自動車で、そのコンセプトは明快だ。「電気自動車というと速くて、でかくて、加速がいいといったイメージが強いが、われわれが今からそこに挑戦しても意味がない。全く逆に小型で、スローで、人にやさしい乗り物を目指しました」(伊藤氏)。

 電気自動車なので環境にもやさしいだけでなく、高齢化社会に対応したコンパクトシティ化を進めるには、「小型でスローな乗り物」が必要という信念がある。

「街中の細い道で活躍することを想定しています。小さなクルマに乗っていると、トラックなど大きなクルマと並走されると怖いと感じる人が多い。だから、低速の小型車しか走れない道路を増やす。人とクルマの付き合い方として、そんな提案もクルマの側からしていきたいんです」(伊藤氏)

 リモノの主なスペックは、全幅1m×全長2.2mで、普通の駐車スペースなら4台停められるほどの大きさだ。乗車定員は大人2人または大人1人と子ども2人。最高速度は時速45kmで、交換式のカセットバッテリーを使い、航続距離は50kmを目指す。クルマの重量は現在約320kgだが、200kg以下を目標としている。規格としては、後述する「欧州L6e」を意識した。

 もう一つのこだわりが、買った人、使う人がワクワクするような商品を「日本発」で生み出すということ。「実はクルマには興味がない」と語る伊藤氏が「僕でも買いたくなる商品」にと、徹底的に「カワイイ」にこだわった。根津氏は「クルマのたたずまいをかわいくすることがチャレンジだった。何回もデザイン変更して、3回も意匠権を取ったんですよ」と打ち明ける。車体表面はなんと布製で、着せ替えも可能。豊富なバリエーションが用意されている。「着せ替えの仕組みはまだ暫定的ですが、クッションカバーを交換するのと同じようにしたい」(伊藤氏)。

●開発パートナーの熱き想い

 リモノの開発には、伊藤、根津両氏の情熱とアイデアに魅せられた多くの企業が参加した。大企業から中小企業まで、それぞれが持つ技術と材料を無償提供で支援したため、rimOnO自身が投じた開発費用は2000万円弱に過ぎない。発表会における開発パートナーの熱い声を拾ってみよう。

 リモノの詳細設計を担当したのが、名古屋市にあるドリームスデザイン。同社は自動車部品の設計・開発を生業としている。大手自動関連メーカーへの技術派遣と開発委託が主な業務である。「直接、お客さんに商品を届けられるところに惹かれました。それに企業の大小関係なく、やりたい人を募集していた。こんなオープンイノベーションに飛び付かないなんてあり得ません。わが社の従業員は42人ですが、10人の精鋭がリモノの開発に取り組んでいます。本業のかたわらクラブ活動みたいにワクワクしながらやっています」(奥村康之社長)。

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