金沢大は23年、キャンパス内のトイレを改修するためにクラウドファンディングを実施して話題となった

 日本全体の研究力を上げていくには、大学全体の底上げが必要というわけだ。けれど、簡単に授業料値上げに踏み切れない事情を抱える大学もある。大学会計に詳しい専修大学の小藤康夫名誉教授は言う。

「値上げの検討を報じられていない地方国立大や文系単科大はなかなか値上げできないのではないでしょうか。資金が少なく苦労していても、授業料を上げて地方から若者を流出させるわけにもいきません」

 東大などトップ大は、授業料を値上げしても受験生からの人気は衰えないだろう。また、私立大と比べて安い授業料ゆえ、少々の値上げは仕方ないとする意見もあるかもしれない。けれど、『「大学改革」という病』などの著作がある徳島大学の山口裕之教授は「いま反対の世論が盛り上がらなければ、来年度以降、多くの国立大学が授業料を値上げしていくと思います」と指摘。多くの国立大学が値上げした後を、こう予測する。

学費無償化に逆行

「授業料の上限を設けず、原則自由化という流れになると思います。15年の財政制度等審議会の議論からしても、学費が増えた分、財務省は国立大学の運営費交付金を削減してくるのではないかと予測しています」

 いま、全国の公立の小中学校は授業料がかからない。高校でも学費無償化の流れが広がっている。そんな中での、国立大の授業料値上げに山口教授は言う。

教育無償化の流れに逆行しています。高等教育の受益者は学生本人だけでなく社会全体だという発想が大きく欠落しています。大学で教育を受けるという基本的人権を蔑ろにしていないでしょうか」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年10月14日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
大型セールAmazonプライム感謝祭は10/19(土)・20(日)開催!先行セール、目玉商品をご紹介