国民スポーツ大会の開会式への出席のため、10月上旬に佐賀県を訪れた天皇、皇后両陛下は、江戸時代から酒造りがさかんに行われてきた宿場町にある、地酒を紹介する交流拠点を訪問した。天皇陛下の日本酒好きは知られているが、雅子さまは珍しい日本酒の「酵母」に興味津々。熱心に質問を続けていたという。
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「昨日、こちらの瓶を飲みましたよ」
佐賀県鹿島市のJR肥前浜駅にある、地酒を提供する交流拠点「HAMA BAR」を訪問した両陛下。天皇陛下は、目の前に並ぶ日本酒「鍋島 大吟醸」の瓶を指して、地酒の説明役だった飯盛日奈子さん(25)に言葉をかけた。
陛下が前日に、宿泊したホテルで飲まれたというお酒。それは、飯盛さんが専務を務める富久千代酒造のものだった。
驚いた飯盛さんが、とっさに「いかがでしたか」とたずねると、
「美味しかったです」
と、陛下はにっこり。隣の雅子さまも、飯盛さんに向かってほほ笑んでいた。
天皇陛下の「日本酒好き」は、よく知られているところだ。
「日本酒は、日本食とよく合いますね」
並んでいる日本酒を見ながら、陛下はそう口にした。飯盛さんらが、実は日本酒は中華料理やイタリア料理とも相性がよいことを伝えると、反応したのは雅子さまだった。
「組み合わせをいろいろと試されるのですね」
令和に入ってから、両陛下は海外の賓客を接遇する場で、「和」のおもてなしをする機会を増やしている。これまでフランス料理のコースだった午餐(昼食会)で和食や日本酒を提供し、江戸切子のグラスを用いるなどしている。
そんなおふたりだからか、日本酒への関心の高さをうかがわせた。
「女子会」の言葉におふたりは、にっこり
雅子さまは、日本酒づくりの現場で女性である飯盛さんが働いていることに、関心をもたれたようだ。
「お仕事はいかがですか。大変なことは?」
飯盛さんは、富久千代酒造の後継者として経営を学びながら、杜氏の下で日本酒造りを行う「蔵人」の見習いを続けている。
多くの人に支えられているが重労働が大変だと答えると、雅子さまは、さらに女性の働き方について質問を続けた。
「これからどうしていきたいですか。女性の後継者は珍しいのですか」
確かに酒蔵で働く女性は少ないが、県内の酒蔵では飯盛さんのように後継者として頑張っている若い女性も増えてきている。そう答え、
「女子会になるかもしれないです」
と付け加えると、おふたりは楽しそうな表情で笑ったという。