泉房穂氏

 兵庫県といえば、この人の動向も気になってくる。

 兵庫県明石市の前市長時代に斎藤知事と対峙し、携帯電話の着信拒否をされたという泉房穂氏は、斎藤知事の問題について全国のテレビ局で厳しいコメントを繰り広げてきた。2021年の知事選でも候補として名前があがっていた泉氏に、次の知事選への意欲を雑談のなかで聞くと、

「兵庫県知事になったら、3期12年やらないと変えられません。もう還暦を過ぎて、12年やったら70歳を超えてしまう。選挙で当選するのが目標じゃなく、その後何ができるか。兵庫県知事の場合、国からお金をもらってやっていくところがある。国とケンカしても勝てません。お金しぼられたら終わり。それにもし知事になってもすぐに何らかの理由をつけられ、パワハラだとか紛糾し、適当に理由付けされて百条委員会になる。それなら、兵庫県を託せる人を探し、その脚本を作る側にまわりたい」

 と、出馬に消極的な発言だった。

 泉氏は9月10日にSNSで、「17日に選挙に関する重大な発表がある」と予告。泉氏の「知事選出馬か?」とも思われたが、ふたを開ければ、泉氏の誘いで2023年の県議選で当選した橋本慧悟県議が、次期衆院選で兵庫9区から立憲民主党公認で立候補するという発表だった。兵庫9区は自民党裏金議員、西村康稔前経産相の地盤だ。

「橋本君は、私に兵庫9区から『出え、出え』と何度も話があった。だが私は橋本君こそ出るべきだと背中を押した。選挙での応援? 立憲民主党だから組合のほうでやるでしょう。けど情勢次第では私もね」

 と選挙が大好きな泉氏らしい発言。衆院選に「弟子」を立てたということは、本命はやはり知事選なのか?

 泉氏に、自民党は官僚OBを次期知事選に検討していることを伝えると、

「変な人には知事になってほしくない。そこでカードを切るという選択肢はゼロではない。選挙の告示日の朝に気持ちは変わった、兵庫のためだったらやる、という選択肢はある。とっておくということですね。ああ、言い過ぎたかな」

 と冗談めかしつつ、「出馬」の可能性をほのめかした。

 前出の自民党県議はこう話す。

「知事選になったら、斎藤知事の万が一の再選は県民が許しません。うちも候補を探しているが、泉氏が出てきたらお手上げです」

 泉氏が知事選で切る「カード」に注目が集まっている。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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