長崎小の職員室の席は学年ごとに分かれる。授業が終わって職員室に戻れば、自然と教員同士での情報共有が始まる。必然的にコミュニケーションが生まれるのも魅力だ(写真:編集部・深澤友紀)
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 教員不足が深刻な問題となる中、「チーム担任制」を取り入れた学校がある。教員だけではなく、子どもたちからも好評だ。新しい取り組みを取材した。AERA 2024年9月30日号より。

【図】不足率はどれくらい? 文科省が行った「教師不足の実態調査」結果

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 帰りの会が終わった午後3時すぎ。子どもたちがランドセルを背負って教室から飛び出していく。「先生、さようなら!」「おう、気をつけて帰ってなあ」。教室から出てきてにこやかにあいさつを返す先生は、学級担任ではない。千葉県の流山市立長崎小学校ではおなじみの光景だ。

「昨年度から、3年生以上で学年の教員全体で学級運営を行っています。教科担任制に加えて、今年度からは朝や帰りの会なども交代しながら受け持つチーム担任制を取り入れています」

 そう教えてくれたのは同校の山口謙校長だ。2年前、当時の6年生の学年主任だった田川智惠さんの提案で学年内で教科担任制を行い、児童へのアンケートでも9割が「よかった」と回答したことから本格導入した。

 今、学年内で授業ごとに分担する「教科担任制」を文部科学省も推進しているが、その先の取り組みが、生活指導や教育相談含め学年の学級運営全体を複数教員で見る「チーム担任制」。教員不足の改善、教員の負担減が期待されている。

 同校は1学年3クラス。国語を受け持つ1組の担任教員が1限目は担任クラスで国語の授業、2限目は2組、3限目は3組で国語を教えるといった形でクラスを渡っていく。教科担任制の分担は、教務主任がどの先生がどのクラスを担当するか一目でわかるように、色分けした教員の“時間割”を作成して管理している。授業を担当する教科が絞られることで他教科の授業準備が必要なくなり、退勤時間も早くできる。4年生の学年主任の日暮彩百合さんは言う。

「国語、算数、理科、社会と、翌日の授業を4パターン準備していたのが、1教科分考えれば3コマ分の授業ができます。作業量としては3分の1くらいになった感じでしょうか」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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