一方で、SSWが介入する場合は、Aちゃんを取り巻く「環境」に目を向けます。起きたことを時系列で考え、それまでのAちゃんの居場所やクラスの雰囲気、家庭環境や家族構成など、あらゆる面から状況を整理してつなげていきます。過去からつながる「考え方のくせ」は家庭環境から来ている場合も多く、Aちゃんだけでなく、ご家族やきょうだいにも困りごとはないかなどを多面的に聞きながら面談を進めていきます。

「普通の子」と見られたくて

 また、最近とても多いのが、特別支援教育に関するご相談です。私は高校を担当しているのですが、幼少期からの小さなつまずきを積み重ね、10代後半になってどうにもならないくらい苦しくなってしまったというケースが年々増加しているように思います。

 思春期はうつ症状や統合失調症などの精神疾患の発症のピークで、心の不調をかかえるお子さんは珍しくないのですが、メンタルの不調を訴えながらも、専門の医療機関につながることができないケースも多く見られます。どのお子さんも「普通の子」として見られたいために、たくさん傷付いてしまったことについて話してくれます。

「多様性」や「ありのまま」という言葉をよく見聞きする社会になっても、実際の現場ではまだまだ受け止めてもらえないこともあるのです。こうした現状を大人が理解することにより、子どもたちが「ありのまま自分」を大切にできることにつながっていくのだと思います。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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