史上最高のDHとの呼び声も高いマリナーズのエドガー・マルティネス(ロイター/アフロ)
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 ドジャース大谷翔平が、19日(日本時間20日)、前人未到の「50-50」(50本塁打、50盗塁)を達成した。おまけに6打数6安打、10打点、2盗塁、自身初の3打席連続ホームランまでやってのけ「51-51」とさらに記録を更新した。大谷のとんでもない活躍により、この日、チームは勝利し、プレーオフ進出も決まった。こうなると気になるのは、大谷が自身3度目となる「シーズンMVP」を獲得できるかどうか。大谷は昨年9月に肘の手術を受けた影響で、今シーズンは「DH」(指名打者)としての出場となっているが、実は長いメジャーの歴史上、「DH」で「シーズンMVP」を獲得した事例はこれまでない。「シーズンMVP」のハードルの高さを、改めて今振り返る。(この記事は「AERA dot.」で2024年9月13日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。

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 終盤を迎えている今年のメジャーリーグ。各チームとも15試合程度を残すのみとなり、プレーオフ進出に向け激しい戦いが続いているが、今年はドジャースの大谷翔平が自身3度目のシーズンMVPに選出されるかにも大いに注目が集まっている。(文中の成績は現地9月11日終了時点)

 大谷は昨年9月に肘の手術を受けた影響で、今シーズンは指名打者(DH)としての出場となっているが、新天地で大活躍。ここまで打率.292(ナ・リーグ5位)、47本塁打(同1位)、104打点(同1位)と本塁打と打点でトップに立っていることに加え、48盗塁(同2位)も記録し、史上初の「47-47」を達成している。

 歴史的な数字をマークしていることから、大谷がMVPの“大本命”であるのは間違いない。だが、ライバルと目されるフランシスコ・リンドーア遊撃手(メッツ)も打率.268(同23位)、31本塁打(同4位タイ)、85打点(同10位タイ)、27盗塁(同9位タイ)という好成績をマーク。さらに、DHの大谷に対しリンドーアは遊撃の守備でもチームに貢献し、総合的な守備力を測る指標であるUZRの数値が高い(ナ・リーグ2位の2.2)ことから、「MVPは大谷かリンドーアか論争」が激化している。

 攻撃面での数字は圧倒的に大谷が上だが、やはりここまで議論が熱くなるのはこれまで守備に就かないDHがMVPを獲ったことがないからだろう。

 そこで、今回は“凄い成績”を残したのにMVPになれなかった指名打者のシーズンを振り返ってみたい。

 まずメジャーリーグの歴史の中で“最高のDH”との呼び声が高いエドガー・マルティネス(マリナーズ)だ。マルティネスはメジャー通算18年間で2247安打、309本塁打、1261打点をマークし、2019年に殿堂入りを果たしているがシーズンMVPは一度もない。

 最もMVPに近づいたのが1995年のシーズン。マルティネスはこの年キャリアハイの成績をマークしたが、ア・リーグMVPの投票では3位に終わった。その年にMVPとなったモー・ボーン一塁手(レッドソックス)、次いで2位となったアルバート・ベル外野手(インディアンス)とマルティネスの成績は以下の通りだ。(カッコ内はリーグでの順位)

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首位打者に驚異の出塁率をマークするもMVPならず