AERA 2024年9月23日号より
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 物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年9月23日号より。

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 先日のX(旧ツイッター)で、「知的レベル」がトレンド入りしていた。ご覧になった人もいるだろう。小泉進次郎氏の自民党総裁選への出馬会見で、ある記者から質問が飛んだ。

「小泉さんが首相になって、G7サミット(主要7カ国首脳会議)に出席されたら知的レベルの低さで恥をかくのではないか。みなさん心配しております」

 この質問自体に、今の日本社会が抱える問題が凝縮されていると僕は感じた。

「恥をかく」わけにはいかないし、失敗するわけにはいかないというプレッシャー。そして、「みなさん心配しております」と他人に責任をなすりつける風潮。これは日本社会に蔓延する息苦しい空気そのものだ。

 会社で働いていると英語は話せなきゃいけないし、エクセルもチャットGPTも使いこなせないといけない。プレゼンスキルやマーケティング能力も磨かないといけない。

 なんでもできるゼネラリストを目指す人が最近は増えているという調査結果もあるが、会社もゼネラリスト人材を求めているのだろう。

 その記者の質問に対して小泉氏はこう返した。

「足りないところを補ってくれる最高のチームを作ります」

 これは、日本社会が抱える問題の答えを見事に言い表している。得意なことを自分がやって、不得意なことは周りの人に補ってもらえばいい。今の日本に必要なのは「仲間意識」なのではないだろうか。一見、経済とは関係ない話にうつるかもしれないが、これこそが経済なのだ。

 僕は中学校や高校などによばれて、金融や経済についての講演を行っている。そこで、まず話すのは「人は一人では生きていけない」ということだ。

 お金が存在しない時代、村の中でいくつもの家族が協力し合って暮らしていた。お金が発明されて、僕らの生活が便利になったのは、お金を支払うことで全く知らない人に協力してもらえるようになったからだ。

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「仲間意識」こそが、日本経済復活に必要なこと