潜入取材という手法は
企業の守秘義務契約に抵触するのか
私は、土曜日にビックロでのシフトが入っていた。雑誌の発売からシフトが入る前に、辞めてくれという話がくるのだろうか、と思っていたのに、ユニクロからの連絡はない。
土曜日にビックロに出勤すると、すぐに店長室に呼ばれた。店長室には、本社の人事部の部長が、「週刊文春」を持って待っていた。
「この週刊誌の記事を書かれたのはあなたですよね」
――そうです。
「本日出勤予定だったんですけれど、当店を退職するご意思はないんでしょうか」
――ありません。
「ならば、当社のアルバイト就業規則に抵触しているということで解雇通知をさせていただきたい、と思います」
――というと、この記事のどこが就業規則に抵触しているのでしょうか。
そう私が突っ込むと、人事部長がひるんだ。
「週刊誌に記事を書かれたということは、当社の信用を著しく傷つけたということです」
さらに私が、「記事のどこが就業規則に違反するのか」と問えば、こう答えた。
「アルバイト就業規則の、故意または重大な過失により当社に重大な損害を与え、または当社の信頼を著しく傷つけたとき、という箇所に当てはまると判断しました」
――ならば、懲戒解雇ですか。
「懲戒解雇ではありません。諭旨退職です」
ここが大切なポイント。
懲戒解雇ではなく、諭旨退職であるという点が大事だ。
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