いつも優しく上機嫌で取材現場を盛り上げてくれる横山剣さん(写真/写真映像部・上田泰世)

 たとえばNight Tempo(シティポップの流行を生み出したDJ/アーティスト)、ジンジャー・ルート(日本のポップカルチャーからの影響を公言しているアメリカの音楽ユニット)もそうですが、昭和のポップスの捉え方がすごく新しくて、“こんな聴き方があったのか”と気付かされることもあるので。CKBの共同サウンド・プロデューサー、Park 君(gurasanpark)も素晴らしいですね。音楽の趣味はすごく近いんだけど、一緒にアレンジを考えていて“そんな解釈もあるんだ?!”という新鮮な驚きがあります」

根底にあるのは生涯現役の精神

 個性的なスタイルを持ちつつ、現代的なテイストもどんどん取り込み、“らしさ”と“新しさ”を共存させながら進み続けるCKB。その根底にあるのは、生涯現役の精神だ。

「30代、40代だったら“ちょっと休んで、英気を養ってから再起動”なんてことも出来るでしょうけど、60歳を過ぎたらそんな悠長なこと言っていられない。常に“これが最後だ”“いつ終わってもいい”くらいの気持ちでやらないと。それを続けることが生涯現役なのかなと。渡辺貞夫さん(ジャズミュージシャン)は90代になっても毎年ように新作を出されているし、我々も見習って、1分1秒に命を燃やしていかないとダメですね」

「ヒットを狙って上手くいった試しがない。『タイガー&ドラゴン』は無意識過剰みたいな曲だし(笑)、やっぱり天然モノがいちばん」「芯さえぶれなければ、トレンドを取り入れるのも楽しい」と生涯現役の秘訣を語る剣さん。いちばんのストレス発散、パワーチャージの方法はやはりライブだという。

「サーキットで車を走らせるのもいいんですけど、いちばんはやっぱりライブですね。日常生活で頭にくるようなことがあっても、ライブをやれば全部吹っ飛ぶし、“あの人もいいところがあるしな”と思っちゃう(笑)。ライブに来てくださるみなさんに感謝ですネ!」

「いちばんのストレス発散、パワーチャージの方法はやはりライブ」と語る横山剣さん(写真/写真映像部・上田泰世)

 (取材・文/森 朋之)

 よこやま・けん(クレイジーケンバンド)/1960年生まれ、神奈川県横浜市出身。小学校低学年の頃より脳内にメロディーが鳴り出し独学でピアノを弾き作曲を始める。小学校5年生(1971年)の時、中古レコード屋の野外サウンド・システムにてマイク片手に実演販売を行う。こうしたことがキッカケとなって音楽の世界にのめり込んで行く。中学2年よりバンド活動を開始して以来、地元横浜を中心に数多くのバンドで活躍するが、1981年にクールスRCのコンポーザー兼ヴォーカルとして晴れてデビュー。以後、ダックテイルズ、ZAZOU、CK’S等のバンドを経て、1997年春クレイジーケンバンドを結成。以降、2002年発売の「タイガー&ドラゴン」などヒット曲多数。通算24枚目のアルバム『火星』を24年9月18日に発売。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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