日本の地名は難しい読み方でも、漢字の雰囲気から、なんとなく意味を推理することができます。ところが、北海道の地名の8割はアイヌ語由来によるものです。読み方を見ても意味がわからないうえに、無理矢理(?)漢字をあてはめたような雰囲気がします。北海道の難読地名の漢字だけを並べて、「さて何と読むでしょう」と問われても、よほどの知識がない限り読むことはできません。そこで、見方を変えて、「その読みに、その漢字をあてるのか!!」という観点で見てみると、まるでそこはキラキラネームの世界!!
この記事の写真をすべて見る「音威子府」 「寿都」 「弟子屈」。北海道民なら難なく読める初級クラス。
3月26日に開業した北海道新幹線で、北海道に行こうと思っている方も多いのでは。そんな北海道は、難読地名の宝庫です。地名の8割がアイヌ語に由来している北海道の地名は、キラキラネームばりの当て字が多く、漢字そのものの意味はまったく関係ありません。漢字を見ても意味がわからない、超あて字の地名だらけ。そんな北海道を旅行をする前に、北海道の難読地名の世界を、ちょっとのぞいてみましょう。
たとえば、「音威子府」 「寿都」 「弟子屈」。北海道民なら、よく耳にする地名なので、すんなりと、「おといねっぷ」 「すっつ」 「てしかが」と読むことができます。これら初級クラスだと、ひと昔前の「夜露四苦」のように、漢字と読みがなんとなく一致しています。
しかし、読みと漢字が一致しない地名もたくさんあります。「おしょっぷ」は漢字にすると「押帯」、「しぶちゃり」は「染退」、「ちぷらんけうし」は「重蘭 窮」、「ぶいま」は「冬窓床」、「せきねっぷ」は「賤夫向」…。こうなるともう、その読みにどうしてその漢字をあてたのか、考えてもしかたがありませんね。北海道には、こんな地名がまだまだたくさんあります。
「冠」 を 「かっぷ」 と読ませる !? 生き物っぽい 「とどほっけ」、「ごきびる」、「べかんべうし」。
北海道の地名には、「○○かっぷ」というふうに、「かっぷ」がつくものがあります。この「かっぷ」にはなんと、「冠」の字をあてています。キラキラネームでも思いつかないような、「かっぷ」の読ませ方。この「かっぷ」を使った地名は、「占冠」(しむかっぷ)、「新冠」(にいかっぷ)、「愛冠」(あいかっぷ)、「正利冠」(まさりかっぷ)などがあります。
生き物っぽい響きの地名もあります。たとえば「とどほっけ」。北海道らしい「とど」と「ほっけ」の組み合わせのようですが、アイヌ語の「トトポケ」(岬の陰)が由来です。漢字で書くと「椴法華」。ほかにも、「濃昼」(ごきびる)、「別寒辺牛」(べかんべうし)、「支寒内」(ししゃもない)などなど、生き物が地名に含まれているような地名がたくさんあります。それにしても、「ごきびる」という地名に「濃昼」をあてるとは…。
「あいのない」、「おいかまない」、「にこまない」…。「ない」 だらけ…。
北海道の地名には、「○○ない」のように、「ない」がつくものがたくさんあります。しかも、どことなく否定形の「ない」のような雰囲気がする地名が多いのです。たとえば、「相内」(あいのない)。まるで「愛がない」ような地名です。「生花苗」(おいかまない)は、「おい、噛まない」と叱られているようです。「入境学」(にこまない)に至っては、「煮込まない」そのものです。そのほかにも、「晩生内」(おそきない)、「於札内」(おさつない)、「納内」(おさむない)などなど、「ない」一族はかなりの数があります。
日本の古い地名だと、漢字や読みで、その成り立ちや歴史を想像できますが、北海道のアイヌ語由来の地名は、当て字そのもので、漢字の意味はまったく関係ありません。特に道東には、びっくりするような読みに、びっくするような漢字をあてた地名がたくさんあります。キラキラネームよりも古い古い歴史がある北海道の地名。北海道新幹線が開業し、身近になった北海道は、4月の末ころから徐々に桜が咲き始めます。そんな北海道を旅するとき、難読地名を訪ね歩くのもまた、一興ですね。