まだ現実には起こっていないことなのに、将来に対してネガティブなことばかり考えて身動きが取れない。ランサーズ創業者、代表取締役社長 CEOの秋好陽介さんを救ったのは、「筋トレ」だった。AERA 2024年9月9日号の「最強の回復法」特集より。
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「どうしよう、どうしよう」と、かつては1カ月も悩み続けることもあった。クラウドソーシング事業のランサーズの創業者でCEOの秋好陽介さんの負の思考ループを止めたのは、筋トレだった。
7年ほど前、会社が急拡大して業績も好調だったが、自宅では悪夢で目が覚めることもあった。時計を見たら朝4時。冬なのに冷や汗をかいていた。
「社員が定着しないこととか、マーケットとの差とか、自分ではコントロールできないことに悩んでいました」
過去に、これをしたから社員は辞めたかもしれない。今後もっと社員が辞めるかもしれない、お客さんが離れるかもしれない……。起こってもいない未来の不安が頭をよぎる。他の経営者と比較しては苦しんだ。
経営者仲間に相談すると、運動を勧められた。当時の体脂肪率は20%。トレーニングなどしたことはなかったが、筋トレを始めた。朝30分間、ジムに通って、トレーナーにマンツーマンで教えてもらった。すぐに変化を感じた。65キロしか持ち上げられなかったベンチプレスで、80キロを上げられるように。目標達成する喜びを感じた。
「経営は頑張った分だけ、成果が出るとは限らないし、結果が出るのは1年後ということもあります。不確実性が高い。でも筋トレは頑張った分だけ、すぐに筋肉がつきます。一日の中に、努力が報われる瞬間があるのは、精神衛生上よかった」
週4日のトレーニングで、半年で体脂肪率4%まで絞った。肌つやもよくなった。夜によく寝られるようにもなった。いいことずくめだった。
筋トレは、マインドセットでもあったという。
「バーベルを上げるときって、過去の反省とか、未来はどうなるとか、何も考えられないです。今しかないんですよ」