秋好陽介さん(43)(あきよし・ようすけ)/1981年生まれ。大学時代、ITベンチャーを起業。2008年、現・ランサーズを創業。企業とフリーランス、副業人材のマッチングサービスを提供(撮影/写真映像部・和仁貢介)
この記事の写真をすべて見る

 まだ現実には起こっていないことなのに、将来に対してネガティブなことばかり考えて身動きが取れない。ランサーズ創業者、代表取締役社長 CEOの秋好陽介さんを救ったのは、「筋トレ」だった。AERA 2024年9月9日号の「最強の回復法」特集より。

【写真】「筋トレで負の思考を止める ランサーズ創業者、代表取締役社長 CEO」はこちら

*  *  *

「どうしよう、どうしよう」と、かつては1カ月も悩み続けることもあった。クラウドソーシング事業のランサーズの創業者でCEOの秋好陽介さんの負の思考ループを止めたのは、筋トレだった。

 7年ほど前、会社が急拡大して業績も好調だったが、自宅では悪夢で目が覚めることもあった。時計を見たら朝4時。冬なのに冷や汗をかいていた。

「社員が定着しないこととか、マーケットとの差とか、自分ではコントロールできないことに悩んでいました」

 過去に、これをしたから社員は辞めたかもしれない。今後もっと社員が辞めるかもしれない、お客さんが離れるかもしれない……。起こってもいない未来の不安が頭をよぎる。他の経営者と比較しては苦しんだ。

 経営者仲間に相談すると、運動を勧められた。当時の体脂肪率は20%。トレーニングなどしたことはなかったが、筋トレを始めた。朝30分間、ジムに通って、トレーナーにマンツーマンで教えてもらった。すぐに変化を感じた。65キロしか持ち上げられなかったベンチプレスで、80キロを上げられるように。目標達成する喜びを感じた。

「経営は頑張った分だけ、成果が出るとは限らないし、結果が出るのは1年後ということもあります。不確実性が高い。でも筋トレは頑張った分だけ、すぐに筋肉がつきます。一日の中に、努力が報われる瞬間があるのは、精神衛生上よかった」

 週4日のトレーニングで、半年で体脂肪率4%まで絞った。肌つやもよくなった。夜によく寝られるようにもなった。いいことずくめだった。

 筋トレは、マインドセットでもあったという。

「バーベルを上げるときって、過去の反省とか、未来はどうなるとか、何も考えられないです。今しかないんですよ」

次のページ
今、この瞬間に集中する