イギリス王室は1997年の「ダイアナ事件」で、ダイアナを慕っていた国民の気持ちとの距離が明確になり支持率を下げることになりました。この失敗から女王は、国民に自分たちを分かってもらう「広報」が足りなかったことを悟ります。そこで王室は、中世以来自分たちの財政で王室を運営していること、1760年代からヨーロッパに先がけて病院や学校を作るチャリティー団体を運営していることなどを広報しています。初めはホームページで、それからX(旧Twitter)、YouTube、Instagramと接続することで広い層の理解を獲得しました。この積極的な広報はヨーロッパ大陸の王室にも広がり、今ではSNSを通じて自分たちが日々行っていることを広報しています。
こうした動きを宮内庁も見ているわけですが、英国王室の広報活動を積極的に学んでいる印象を受けません。ようやく今年の4月になって、Instagramを始めています。
日本国民は、相変わらず天皇は毎日何を行っているのか、皇室とはどのような存在なのかを分かっていません。広報が足りていないので、下から声が湧き上がってこないわけです。
宮内庁は国民の皇室に対する興味がなくなる前に、特に若い世代への広報を危機感を持って、積極的に取り組んでほしいと思います。
(構成/ライター・本山謙二)
※AERA 2024年9月9日号