楽譜『うたはいつもそこにいて』 覚和歌子:作詞、谷川賢作:作曲
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楽譜『うたはいつもそこにいて』 覚和歌子:作詞、谷川賢作:作曲
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霧島みやまコンセールでのレコーディング風景 がんばりすぎてちょっとへたってる子もいます (撮影/徳田豊志)
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霧島みやまコンセールでのレコーディング風景 がんばりすぎてちょっとへたってる子もいます (撮影/徳田豊志)
やった~ 全12曲録りおわった~~!! (撮影/徳田豊志)
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やった~ 全12曲録りおわった~~!! (撮影/徳田豊志)
CD『うたはいつもそこにいて』、ジャケット画像
CD『うたはいつもそこにいて』、ジャケット画像

 実はあまり知られていませんが、私はレーベルを持っています。って、別に自慢することでもないか。いまや誰もが自分のレーベルからCDを出す時代だからなあ。はい、そこですかさず宣伝です! 俊太郎の朗読と私のピアノ&木管四重奏団「であるとあるで」とのコラボ盤『あるでんて』も“現代詩を歌う”DiVaの最新作『うたがうまれる』もトゥルバドールカフェという私の個人レーベルからリリースしました。かと言って自主制作盤にこだわって、メジャーから出すことをあきらめている訳では決してありません。万単位(いや正直、千単位でも……)では売れない作品を、どうやってメジャーと手を組んだらいいのかわからないのです。さて、そのことはおいといて。このたび最新盤をリリースしました。じゃじゃ~ん!

 詩人の覚和歌子さんとタッグを組んで、音楽之友社の月刊誌「教育音楽」に13年春から1年間にわたり連載していた子どもたちのための合唱曲が全12曲。一足先に楽譜集として出版されたのが14年夏。それから「やっぱり実際の歌声が聴きたい。CDはいつ出るの?」ときかれ続けて、当初から曲集から何曲かピックアップして歌ってくれるグループはあったのですが、まずは12曲全部を歌ってくれる合唱団を探すところからスタートしました。

 持つべきものは友達です。「パリャーソ」のツァーで日頃からお世話になっている鹿児島の徳田豊志さん(元小学校の教員です。学校関係、特に音楽の先生のネットワークがとても広い方)に相談にのってもらったのが14年の暮れ。「知り合いの学校にきいてみましょうか」で始まって、早々に手を挙げてくれたのが、鹿児島大学教育学部附属小学校の合唱部。そして、昨年5月の鹿児島パリャーソツァーの合間をぬって学校に顔会わせに行き、子どもたち、指導の五代香織さん、ピアニストの室屋麗華さんと出会い、歌声も意気込みも聞き、よし!これなら秋には全曲いけるぞ、となり、レコーディングが昨年10月8日。

 こう書くとトントン拍子で制作がすすんだかのようですが、確かに「打てば響く」という感じでいろいろと決まっていきました。鹿児島の人たちはおとなもこどもも、みんな明るくてノリがよくて協力的。最高です。ぼむっ太鼓判!

 そう。どんなにがんばろうが一人で孤軍奮闘してもCDはできるはずもなく、人とのつながりの中からいつの間にか、ポーンと飛び出してくるのです。まずは今回の“最高殊勲選手”の徳田さん。この方のアイデアと行動力なくしては語れません。合唱団を推薦してくれたことに始まり「霧島に国際音楽ホール(みやまコンセール)」というすばらしい音のホールがあるので、そこで録音しませんか?」と持ちかけてくださり、あっと言う間にホールも合唱部のスケジュールもおさえてくださいました。録音当日はひたすらカメラマンに徹してくださり、アングルを変えてホールのあちらこちらから神出鬼没の撮影をしてくださいました。とにかくすべてにおいてすばらしい手腕を発揮してくださって、感謝の気持ちあるのみです。

 大切な録音技師は、旧知の五島昭彦さんにお願いしました。こだわりのワンポイント録音の名手として、「パリャーソ」のCD『風に吹かれて』と『スイート・メモリーズ』を録音してくださった方ですが、スタジオではなくホール録音であればこの方にお願いすると決めていましたが、これまた二つ返事でOK。自前の機材を背負って、えっちらおっちら神戸から駆けつけてくださいました。

 さて、肝心要の歌。これはもう出会いに感謝。素晴らしいとしかいいようがありません。ため息。どんなに素晴らしいかは、もちろんCDを聴いて頂くしかありません。

「♪不思議をほおばって あおぐ空の奧」from《おとなになったら》
「♪だまらないで 正しくなくても 一度だけわたしのやりかた試すのを ゆるしてほしい」from《おしえて》
「♪決して立ち止まらない風のように 終わりながら始まる物語」from《よろこびのために》

 覚和歌子さんの玉手箱のように無限にあふれ出る珠玉のことばの数々を、この清らかで若さあふれる凜とした歌声で聴くことは無上の喜びです。

 最初は孤軍奮闘の“自主制作”でこのCDを出そうと動きはじめたのですが、結局のところ、旧知の、そして新しい、人とのつながりと熱意の中から生まれてきたこの作品を、深く愛しています。関わってくださったすべての人に感謝します。ありがとうございました。 [次回4/11(月)更新予定]

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