プロアスリートとして後輩たちが進むべき道を作ってきた山本篤は若手に慕われる存在だ(写真:アフロスポーツ)
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 28日に開幕するパリ・パラリンピック。日本代表選手団の「世代交代」が進む大会になりそうだ。AERA 2024年9月2日号より。

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 パリ大会の前後に、日本のパラスポーツを長年牽引してきた先駆者たちが引退する。パリ大会は「世代交代」を印象付ける大会になりそうだ。

 日本代表選考レースの終盤で、競技人生に区切りをつけたのが、義足の陸上競技選手として初めてパラリンピックでメダルを獲得した42歳の山本篤だ。東京パラリンピックの走り幅跳び(T63)で自己ベストの6m75を跳んだものの、4位だった元世界記録保持者は大会後、こんな思いを強くしたという。

「パラリンピックはもう出るだけでは意味がない時代。メダルを獲ってこそ」

 山本のクラスではパリでメダルを獲るには7mの跳躍が求められるとみられる。5月に神戸で行われた世界選手権では6m48の5位に終わり、パリのメダルの可能性がなくなったタイミングで引退を決めたという。

「競技人口が増え、競技レベルも上がっていくし、(記録も)今までとは考えられないレベルになってきている。日本もどんどんレベルアップしていかなければならない」と引退会見で語った山本。東京パラリンピックの開催が決まって以降、国内では障害者アスリート雇用を取り入れる企業が増加したこともあって、ピークを過ぎても競技を続けるパラアスリートが少なくない。しかし、山本は「次にステップアップするためにも、区切りは自分で決めたほうがいい」と熱弁する。

 事故や病気により途中で障がい者になる場合もあるパラアスリートの「現役生活」は、一般的にオリンピック選手らと比べて長い。そのため、平均年齢も決して若くない。それでも、パリ大会は初出場が日本代表選手団全体の3分の1。10代、20代の選手が全体の50%を占め、過去大会から若返った印象だ。

 開会式で旗手を務める陸上競技の石山大輝は、パラリンピック初出場の24歳。メダルも期待される新星だ。世界選手権では走り幅跳び(弱視T12)で2位。試技の合間に石山がアドバイスを求めるスタンドには、2000年シドニーパラリンピックから活躍する義足のハイジャンパー・鈴木徹コーチの姿があった。

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パリで引退する選手も