「親の所得に関わらず、子どもの支援をしっかりと行っていく」と語る森澤恭子区長=東京都内、米倉昭仁撮影

 配布対象は区内に住む小中学生約3万人の家庭。7月中旬から申請の受け付けを開始し、8月5日の締め切りまでに想定の5000人を大幅に超える1万1129人の子どもたちの家庭から応募があった。当初、区は補正予算でコメ10トンの購入費として、約830万円を計上した。しかし、それだけでは足りなくなったので予備費を使い、追加で米を購入するという。

夏休み食糧支援、今年はコメを増量

 認定NPO法人キッズドアはコロナ禍の始まった2020年から、ひとり親家庭と多子世帯向けに「夏休み緊急食料支援」を行っている。今夏は、過去最多の2921世帯から申し込みがあった。

 7月下旬、千葉県船橋市の倉庫を訪れると、同NPOの職員と運送業者の社員約10人が食品の梱包作業に汗を流していた。

 キッズドアで「ファミリーサポート」を担当する渥美未零さんは言う。

「昨年は冷凍品と常温品を送りましたが、冷凍品は別に発送しなければならず、輸送資材や送料がかさむ。今年は常温品だけにしてコストを削り、食品の量を増やしました」

 コメの量も今回、4キロから5キロに増やした。渥美さんは精米したてのコメの詰まった袋を見せてくれた。

「いくつもの食品会社と交渉し、価格を抑え、苦労して3000袋近い数を確保しました」(渥美さん、以下同)

 コメのほかにも、麺類、パスタソース、レトルトのカレー、コーンフレーク、ホットケーキミックス粉、菓子もある。食品と輸送資材、梱包費、送料を合わせて、1世帯当たり約8000円という資金はクラウドファンディングでまかなっている。企業から寄付された食品も一緒に送る。

「ホットケーキミックスはお子さんたちからとても喜ばれます。卵や牛乳が必要ですが、親子で一緒に作って、夏休みの思い出になったらいいな、とか。そういう思い入れはどの食品にもあります」

NPOキッズドアの「夏休み緊急食料支援」の梱包作業=千葉県船橋市、米倉昭仁撮影

夏休みの短縮や廃止を望む声

 ファミリーサポートには、約3900世帯(8月1日現在)が登録している。5~6月に実施したアンケート(回答数1821件)によると、登録世帯は母子世帯が90%、世帯所得が200万円未満は54%だった。

「家計が昨年より非常に厳しくなった、と回答した世帯が約8割もいました。物価の高騰が続いているのに、収入は増えていないところが多いですから」

 夏休みについて尋ねると、小中学生のいる世帯の13%が「なくてよい」、47%が「今より短いほうがよい」と回答した。その回答者が夏休みの短縮や廃止を望む理由(複数回答)は、「子どもが家にいることで生活費がかかる」(78%)、「給食がなく、子どもの昼食を準備する手間や時間がかかる」(76%)、「子どもに夏休みの特別な体験をさせる経済的な余裕がない」(74%)、「給食がなく、子どもが必要な栄養をとれない」(68%)などだ。

「お米を調達するのがめちゃくちゃ大変でした」と語るNPOキッズドアで「ファミリーサポート」を担当する渥美未零さん
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高くて買えないのが情けない