――もちろん実力あってこそだと思いますが、自分から嫌な仕事を断るようになったのはいつごろからですか。
結婚後に親の借金を返し終えた時と、その後、子どもが生まれたときかな。お金に興味がなくなって、この仕事に家族との時間を奪われるのか!という気持ちになりました。
家には赤ちゃんが2人いて、父親の代わりはいないから、テレビの仕事のオファーが来ても「これ、俺じゃないとダメ?」と思う。僕は中学まで家にテレビが無かったので、見る習慣がないし、そもそもTVスターになりたいわけじゃない。収録中も常に「向いてないな」と思っているんですよね。その感覚がより強まり、ゲストで人数合わせのような仕事は断ることも多い。「これ井上だけでいけるんじゃないですか」が口癖になっていて、最近はマネージャーさんが先回りして井上だけにしてくれていますね(笑)。
テレビでよくあるのは、井上のいじり方を僕がやって見せる、ウケる、アイドルたちが適当にいじる、ウケるというパターン。俺はただの説明書です。あいつはもう説明書いらずなので、僕は今あるレギュラー番組と漫才番組ぐらいでいいのかなと思っていますね。
――忘れられる恐怖は?
ないですね。テレビに重心を置いてしまうと、怖いという感覚になると思うんですけど。もちろん表面的なファンは減りますよ! でも興味を失わせへんように自分を更新し続けていたら大丈夫と僕は思うので、定期的に舞台に出て、新ネタを作り続けて、常に新しい表現を見せて攻め続ける。
井上の長期休業のときも、テレビを諦めて劇場で食っていけばいいと、全く焦らなかったんですよ。まさかここまで復活するとは思っていなかったんですが(笑)、それは本当に井上のタレント力やと思います。井上はNON STYLEという会社の社長兼広報。僕は常にヘルメットをかぶった現場監督か職人ですかね。
――仕事面とプライベートでの今後の目標は。
プライベートは、より自然に街にとけこめるような家族になれれば。うちの子たちは近所の喫茶店でよく会うおじいちゃんの膝の上にポンと座ったり、お巡りさんを見る度に「こんにちはー!」「ありがとう」と挨拶したり、すごくいいんです。夫婦としては、お酒好きの奥さんと「いつか朝から飲みたいね」と話しています。仕事は漫才をつくり続けながら、今、裏方としてかかわっている仕事を一つ一つ成功させることですね。有名になるより、会社の力に、NON STYLEの力になりたいです。
(聞き手・構成/AERA dot.編集部・金城珠代)