(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

――我が家がまさにそのパターンです(笑)。

 奥さんの表情からピリピリしてるなと感じたら「完璧にこなす必要ないから何か止めよう」と話します。これは僕がどれだけ自由な時間をあげられるかにもよるんですが、「髪の毛切りに行っておいでよ」と言えて、その間にちゃんと家のことをして、子ども達も楽しませることもできていたら、奥さんもいい顔して帰ってきます。やりすぎると罪悪感が生まれて良くないし、いいタイミングがめちゃくちゃ難しいんですけどね。

――コロナ禍で週休2日宣言された意図は?

 第1波のときに、舞台が中止になってスケジュールが3カ月空いたんです。人生で初めてめちゃくちゃ休ませてもらった。家族と近くの公園で遊んで、「家を遊園地みたいにしよう」とかいろいろ企画したりして過ごし、何のために働いてるんやろ?と立ち返ったんです。稼いだとて、世に認められたとて、何が幸せなんやろ?と。そしたら、僕にとっては好きな人たちと楽しい時間を過ごすことだった。それから吉本には「週2で休みくれ」とお願いして、なるべくそうなるように調整してもらっています。

――「休みたい」と言うと、やる気がないと思われそうでハードルが高くないですか?

 休みを取って怠けていたら総スカンだと思うので、その分、仕事はめちゃくちゃ攻めているつもりです。僕らの芸歴で多いと年に40本も新ネタ書いて、企画を考えて、ムチ打ってる人はいないと思う。出役(でやく)として休みを取っているだけで、頭を使う仕事はいつでもどこでもできますから。家族が寝た後でも、移動中でも。

 それに、自分のスケジュールに余白を作ったからこそ、デカい仕事をやれているとも思う。会社の会議に入って、イベントやフェスの運営をして、基本的に芸人はやりたがらないNSC(吉本総合芸能学院)の講師もやっています。お笑いは教えるもんじゃないし、教わるもんじゃないとみんな知っている。でもやるからにはちゃんと授業を作る。生徒に話す、そしたら自分に全部返ってきて、どんどん伝えたくなる。

 仕事は踏み出してなんぼやと思うんですね。責任を担えば担うほど、失敗したときの「なにくそ」感と成功した高揚感は莫大です。今年、僕が脚本・演出したセリフなしの演劇「結-MUSUBI-」が興行としては大赤字だったんですが、携わったタレントも吉本の社員も「やってよかった。続けましょう」と言ってくれて、赤字=失敗じゃないと気づけたのも、踏み込んだからやと思う。

 昔は嫌な仕事もやらないといけないから疲弊しきっていましたが、嫌な仕事から逃れて、嫌な仕事の中に楽しさを見つけるようになってから、面白くなっている。今は楽しめているので、まったく疲れないです。

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「これ井上だけでいけるんじゃないですか」が口癖