まだ冴え返る日もありますが、徐々に気温が高くなる日が増え、春一番も吹きました。この頃になると、「あぁ、春だなぁ…」と思う瞬間も増えてまいります。
その中で、姿はシンプルながら、その「匂い」で私たちに存在を知らせてくれる花が「梅」です。別名「春告げ草(はるつげくさ)」と呼ばれる花にまつわるお話をいたしましょう。
奈良時代から脈々と続く花の歴史
梅はバラ科の落葉小高木(らくようしょうこうぼく)で、原産地は中国になります。日本には奈良時代にわたってまいりました。そのため、『万葉集』には、梅を詠んだ歌が百十九首もあり、「花と言えば梅」が万葉の時代の常識でした。
その後、平安時代以降になると「花と言えば桜」と言われるようになり、その地位を譲ることになりますが、すでに全国にわたって親しまれ、現在では300種を超える園芸品種があるほどです。
もとになる品種は、野梅(やばい)、豊後梅(ぶんごうめ)、紅梅(こうばい)、杏(あんず)を主として、名前にも物語を感じるものが多くあります。
梅に鶯(うめにうぐいす)、と言う名の梅「鶯宿梅(おうしゅくばい)」
300種もある梅の花は、それぞれに物語を感じる名前がついています。
例えば…思いの儘(おもいのまま)、開運(かいうん)、故郷の錦(こきょうのにしき)、道知辺(みちしるべ)…と、いずれも興味深いのですが、これから見ごろを迎える中に「鶯宿梅(おうしゅくばい)」という名の梅があります。
「梅」は春告げ草、「鶯」は春告げ鳥花は、ともに春の季語であり、梅の木に鶯がとまる様子は昔から春らしさを感じる景色の象徴とされています。その二つが一緒になっているなんて、「ザ・梅」という感じがしますね。
春寒(しゅんかん)にも負けず、健気な花の見どころいろいろ
万葉から平安にかけて、長い間に日本全国へ広まった「梅」。その見どころも全国多岐にわたります。
「松竹梅」に例えられるように吉祥模様(きっしょうもよう)の植物であることから、梅園をはじめ、多くの公園や庭園で見ることが出来ます。
早咲き(12月)から遅咲き(3月)まで、私たちを楽しませてくれる健気な花は、2月に多くの品種が咲きそろいます。
人気の見どころ(るるぶ調べ)
1位 羽木公園(東京都世田谷区)
2位 北野天満宮(京都府京都市)
3位 偕楽園(茨城県水戸市)
白梅のしとやかさ、紅梅のあでやかさ、はたまた、しどけない枝垂れ梅…お近くの見どころへ足をはこび、万葉人の想いに我が身を映してみてはいかがでしょうか。
≪参考≫
俳句歳時記「春」 角川学芸出版編