崔真淑さん
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日銀は31日、金融政策決定会合で、政策金利の追加の引き上げを決めた。政策金利に位置づける無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%程度にする。気になるのは住宅ローンの金利への影響だ。エコノミストの崔真澄さんが変動型金利についてまとめたコラムを改めて紹介する(この記事は6月10日に配信した内容の再掲載です)。

【図解】月々の返済額はこう増える!金利上昇のシミュレーションはこちら

 先日、ある不動産会社の若手社員が、駅前で新築マンションのビラ配りをしていました。そのマンションは、多くの人が聞いたことがある好立地の場所です。にもかかわらず、ビラ配りとは……と気になった私は、ビラをもらうことにしました。

 50平米未満の2LDKで9000万円弱という金額に、私はちょっと戸惑っていました。すると、その若手社員さんは、「この物件は、必ず価格が上がります! 値上がり益を使って、数年後に広い家に越せばいいじゃないですか! 頭金無しの変動金利35年なら支払いも緩やかです」と猛プッシュ。

 投資銀行にいた身としては、「金融商品だったら、必ず値上がり発言は完全アウトだよなぁ……そもそも必ず値上がりするなら、広い家のほうも値上がりして買えないでしょう……って、フル変動金利が前提なんかい!」とツッコミを入れたいのを抑えつつ帰宅しました。たしかに、巷の不動産広告を見ると変動金利35年を前提とするシミュレーションが散見されます。

 今回は、不動産購入において非常に重要な住宅ローン金利について考察します。

変動金利の利用率は7割

 住宅ローン金利は、ざっくり固定金利と変動金利の2種類があります。固定金利は、一定の期間または全期間、金利が固定されています。主に10年物国債金利が軸になり決まります。 一方の変動金利は、金利が変動するタイプで、主に銀行間金利で決まります。

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崔 真淑

崔 真淑

エコノミスト。2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。16年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。18年より同大学の博士後期課程に在籍。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後に、「経済のスペシャリストの世界に触れたい」と、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社。アナリストとして資本市場分析に携わる。当時最年少の女性アナリストとして、NHKなどの主要メディアで経済解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験したのち、日本の経済リテラシー向上に貢献したいとの思いから2012年に独立。経済学を軸に、経済ニュース解説、経済・資本市場分析を得意とするエコノミスト・コンサルタントとして活動。

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