トランプ前大統領は、米共和党全国大会で演説を行う際に、13日の選挙集会で娘らをかばって被弾し、亡くなったコーリー・コンパートアさんの消防用コートとヘルメットにキスした=2024年7月18日(現地時間)(写真:ロイター/アフロ)
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 7月13日に発生した暗殺未遂事件から2日後に始まった共和党全国大会。支持者は、「神が救った」トランプ氏の下、団結を誓っている。AERA 2024年7月29日号より。

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「ウィン、ウィン、ウィン!」

 と、トランプ前大統領は18日夜(米東部時間)の大統領候補指名を受諾する演説を締めくくった。大会に参加した代議員らは、「ウィン、ウィン!」と拳を振り上げて叫び、会場は一体となって勝利を誓った。

「変化の時が来た!(中略)この国を即座に偉大な国にすることを今日、ここで誓う」

 とも。13日の選挙集会中に起きた暗殺未遂事件からわずか2日後に始まった共和党全国大会。撃たれた右耳にガーゼをかぶせたトランプ氏の姿に「USA!」との歓声が会場に響き渡った。まるでトランプ氏の苦難を分け合っているかのように右耳をガーゼで覆った支持者も目立つ。

不死鳥のように蘇った

 大会期間中、トランプ氏はこれまでとは別人物のように見えた。過去の選挙集会で見せた口角を左右に思い切り上げたコメディアンのような笑顔はほとんど見られず、深刻な表情を保った。演説でも、過去にはなかったソフトで人間的な面を強調していた。

 暗殺未遂事件は、熱心なトランプ支持者だけでなく、まだ支持を決めていなかった共和党員の心に突き刺さった。右耳や顔面が血に覆われているにもかかわらず、右拳を振り上げ「ファイト!」と口にした姿は、不死鳥のように蘇った英雄のようにも映った。政治家の思想や政策を弾圧するための暴力的行為「ポリティカル・バイオレンス」に屈しない拳の背面には星条旗がひるがえり、米国人の愛国心に訴える。

 ポリティカル・バイオレンスは、決してあってはならない。しかし、米国はそれを何度も経験してきた異常な国だ。任期中に銃弾で命を落とした米大統領は、リンカーン、ケネディを含め4人。2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件では、民主主義的な対話の場である議事堂で5人もの市民が命を落とした。22年10月には、ナンシー・ペロシ下院議長(当時、民主党)の夫ポール氏が自宅に侵入した男にハンマーで殴られ、頭蓋骨骨折の重傷を負っている。

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