全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年7月29日号にはニューウェルブランズ・ジャパン合同会社 コールマン事業部 オペレーションズマネジメント本部 アフターサービスセンター リペアスタッフ 星野由香理さんが登場した。
【写真特集】大物がズラリ!AERA表紙フォトギャラリーはこちら
* * *
キャンプ用品を製造・販売するコールマンでは、1997年から、壊れた製品の修理やメンテナンスを行うリペアプロジェクトを開始。国内に設置したプロダクトセンターに、全国から送られてくる修理品は年間1万4千件に及ぶ。
その中で主に破れたテントを縫製する仕事を16年間続けている。
「高校の授業でミシンを使ってから大好きになり、この仕事は天職と思っています」
薄い生地から分厚いテント生地まで縫える工場用ミシンを使用。破れた箇所に当て布をして縫製した後に、後ろの縫製部の縫い目から水が入らないよう、シームテープをアイロンで付けていく。
仕上がりの美しさだけでなく、強度を高めることにもこだわっているので、修理箇所から雨漏りや風が入ることはない。
新規修理依頼は1日に10〜20件ほどだが、ゴールデンウィークや夏休み後は100件以上にもなる。1カ所の破れであれば、2時間、1日5件を目標に縫製。
時に経年劣化や損傷が激しい時には不可能に思えるものもあるが、思い出の品をどうしてもというお客の思いに応えたいと、時間をかけて修理することもある。
裏方に徹するので、お客と直接話す機会はないが、「お客様から感謝のお手紙をもらい、その後も続けて修理品を利用してくれることに、やりがいを感じます」と言う。
修理の効率を上げる方法も考案。それまで、都度テントを設営して修理箇所を探していたのを、天井から吊るせるようにして時間の短縮を図った。
趣味は6匹の愛犬と共にバーベキューをすることや、廃棄されたテントの生地で犬用の首輪やカッパなどを作ること。
すると、21年に不用品を新しい製品にアップサイクルする社内プロジェクトがスタート。テントの廃棄布を使った犬用のドッグコートを提案すると採用された。
無駄のない生地取りも重要だが、無地では味気ない。模様を上手く切り取ることで、世界に一つだけのオリジナル商品を心がけている。
その後、子どもが簡単に作れるパラシュートなども企画。「子どもの時から、物を作る喜びや、物を大事にすることを知ってほしい」と話す。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2024年7月29日号