7月7日夜、記者の質問に答える石丸伸二氏

 特に今、お隣の台湾が、まさに“その方向”に動き始めている。長い間禁止されていた代理母出産が合法化されようとしているのだ。背景にあるのは、勢いが止まらない少子化と男性同性愛カップルの要望だ。

 台湾では2019年に同性婚が合法化されたが、同性カップルには生殖補助医療が禁止されている。そのため、自分の遺伝子を持つ子どもがほしい男性カップルは斡旋業者に高額を支払い、海外で代理母出産をしてきた。そういう不満の声の高まりから、代理母出産を緩やかに認めようとしているのだ。草案では代理母を“利用”できるのは、先天的な疾患などによる不妊の女性、妊娠・出産に命のリスクがある女性、そして男性同性婚カップルである。

 そう、石丸氏は「SFの話」とか言っているが、現実のほうがずっと先をいっているのだ。「医療技術を使って、女性の身体を利用して、自分の遺伝子を残す」という「少子化対策」は、「少子化対策」という大義名分だけでなく、「同性愛者の権利」というリベラルな価値としても肯定されている。

 数カ月前、台北を旅行したときに、セクシュアルマイノリティーが集まるエリアで夜を過ごした。そこで小さな子どもと一緒に食事している男性カップルの多さに私は本当に驚いたものだ。

 その話をすると「素敵ね!」とふんわりと喜ぶ人が多いのだけれど、私にはどうしてもモヤモヤする光景に映った。モヤモヤというよりは、はっきりと、苦しかった。同性婚に私は賛成だが、その後に起きることが「こういう世界だ」ということを目の当たりにしたからだと思う。

 同性婚が成立した後は、男性のカップルも子どもを持ち育てる権利が必ず語られていくだろう。それは同性愛者と異性愛者の「結婚の平等」という観点からも肯定されていくだろう。そして法整備がされていくだろう。それは結局、女性の身体を利用した代理母出産の肯定と、生殖補助医療ビジネスの発展につながっていくだろう。そこは、圧倒的に経済的格差のある女が、自分の身体、自分の生活、自分の人生、自分の命をかけなければいけない身も蓋もない世界だ。

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「誰もが認めあえる社会」なのか