蓮舫さんを応援する側が熱心なあまりに醸し出してしまう、「オレは正しい」という従来の左翼的男性のマッチョ感。「正しい」からこそ、相手の女性候補者をとことん貶められる勢い。そこにどうしても心が動かない女性票は確実にあったのではないか。センシティブな女性票をなめすぎていたのではないか。そんなふうに思わずにはいられない。

 私たちは、政党の人たちが選んだ候補者は選べるが、候補者を選ぶことはできない。キレイでカッコイイ女がキリッと正しいことを吠えたからといって、人は揺さぶられるわけではない。むしろ、東京と無関係の田舎者であることをアピールし、自分の半生を語り、今の若者の価値観に離れない形で語りかけたほうが揺さぶられる。「密です!」「3密です!」「レガシーなのです!」と微笑む高齢女性のほうを、よくわからないけどなんだか面白い……とワクワクしてしまうものなのかもしれない。そういうフツーの民の心にもっと寄り添うようなまともな政治家はどうしたら生まれるのだろう。候補者を育てるところから、私たちはやっていかなければいけないのかもしれない。

 ちなみに同時に行われた都議補欠選挙では、自民党は選挙前から3議席を減らした。現政権への不信や怒りを都民は十分に持っている証だ。小池さんの圧勝は決して現政権への肯定ではなく、ただただ小池さんが強く、蓮舫さんが弱すぎた、という結論である。石丸さんには驚かされたが、これがリアルな人心というものだろう。

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