石丸さんには、部下やメディアの人々に高圧的に対応するモラハラ気質が見受けられるが(ネット上で流れる動画などから)、未来に希望を感じられない若者たちに響く言葉を持っていたのだろう。ベテランの政治家2人の対決軸そのものに飽き飽きする層の票を、石丸さんはごっそり持っていったのかもしれない。

 蓮舫さん側の盛り上がりも相当なものだったと思うが、元からいた支持層の輪を大きく広げることができなかった。選挙中に、同性愛カップルのための代理母出産を肯定するツイートに疑問が呈されたり、演説中に「出産すれば控除がある」といった間違った認識(実際は民主党政権時代に所得控除が廃止されている)が批判されたが、真摯に答えない態度に女性票が離れた可能性がある。。

 7月5日金曜日の夜、新宿で街宣していた小池氏に向かって「やめろ」コールが止まらなくなり、小池氏が30秒ほど演説を中断するということが起きた。ネットでは、「都民の怒りが都知事を黙らせた」というような勇ましい書き込みがいくつもあったので、気になって動画を見た。

 実際に動画を見て驚いたのは、小池氏の対応であった。ネット上では「黙らせた」というような書き込みは多かったが、私には小池氏は「黙った」ように見えた。しかも黙っただけではなく、「やめろ」(←三拍子である)にあわせてリズムすら取っているように見えた。しかも口角は上がったまま、余裕の笑みを浮かべた状態で自分にエールを送る人に手を振っていたのだ。なにこれ……「おまえは『やめろ』」のコールにあわせてリズムを取る政治家なんて前代未聞である。

 小池さんが強いのは、こういうところなのかもしれないと思う。小池さんは敢えて黙ることで女性候補者に大声を出す男性たちの存在を可視化させたともいえる。女は怒鳴る男が嫌い。女に怒鳴る男はもっと嫌いなのだ。とっさにそう計算して黙ったのではないかと思われるほど、小池氏の沈黙に敗北感はなかった。

 またこれとは別に、蓮舫さんを応援する立憲民主党の男性政治家に、小池さんを「男性に媚びて出世した人」と断じた人がいた。男性に媚びずに出世する男性などいないのに、女性が出世すると「男性に媚びたから」「女を使ったから」と、女性の努力を軽視する。そういう男を女は嫌う。リベラルを謳いながら、高齢女性を揶揄するような男が女は嫌いなのだ。

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相手の女性候補者をとことん貶める勢い