政府の「真実隠し」を断罪した地裁判断

 100人の官僚に聞けば、100人全員が、「作成していないというのは嘘だ」と答えるだろう。

 しかも、上脇教授が主張した通り、公文書管理法によりこのような資料は作成しなければならないこととされているので、作成しなければ、公文書管理法違反となるから、なおさら、作成されていたと考えるべきである。

 しかし、いざ裁判所が判断するとなった場合、作成すべき主体が絶対に作成していないと言い張ると、作成した証拠がない以上、開示を命じるわけにはいかないとして、上脇教授の請求を棄却する判決が出るのではないかということが危惧された。

 検察庁と裁判所は身内意識が強く、個別検察官の不祥事ならともかく、検察庁や法務省の組織全体の不祥事だとなりかねない本件のような事案について、「一介の大学教授」の訴えをそう易々と認めるわけにはいかないと考えても不思議ではなかった。

 しかし、今回の大阪地裁の判断は違った。

 法務省側の主張とは正反対に、被告側は文書を作成していたはずだと結論づけ、国の不開示決定の大半を取り消す判決を出したのだ。

 裁判の過程では、定年延長の閣議決定当時に法務事務次官だった辻裕教氏の証人尋問まで実施し、裁判長自らが、辻氏に対して、「第三者的にみると、2月8日の黒川さんの定年に間にあわせるように、1月の半ばから急いで準備をしたようにみえなくはないと思うんですが」と上脇教授が主張する趣旨に沿った補充尋問を行っている。一般市民の常識に沿った裁判の進め方だった。

 私は今回の判決文全文を読んでみたが、そこには、大阪地裁が、検察庁や法務省が組織ぐるみで、黒川氏の定年延長のための法律解釈変更についての真実を隠そうとしたことを断罪する判断が示されていた。

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新たな文書の開示があるのかが焦点