
安倍元首相が襲撃された事件から7月8日で2年。殺人などの罪で起訴された山上徹也被告(43)の伯父の山上東一郎さん(79)が本誌の単独インタビューに応じた。AERA 2024年7月15日号より。
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昨年10月、奈良地裁で山上被告の公判前整理手続きが始まった。7月3日までに4回開かれ、裁判官、検察官、弁護士によって争点や証拠が絞り込まれつつある。初公判は年明け以降とみられる。
漏れ聞こえる被告の声
元々、公判前整理手続きは昨年6月12日に始まる予定だった。だがその日、地裁に届いた段ボール箱に金属探知機が反応し、急きょ中止に。奈良県警が調べたところ、箱の中身は被告の減刑を求める署名だった。
山上被告の弁護団は度々、奈良県の記者クラブで会見を開き、被告の近況を明かしている。
山上被告が「事件について考えない日はない」と話し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を解決することの難しさを語っていること。事件が「宗教2世」に与えた影響を「想定していなかった。2世の人にとって良かったか悪かったかわからない」と話していること──。
出だしでつまずいた公判前整理手続きと、初公判を前に漏れ聞こえてくる山上被告の言葉。元弁護士でもある伯父の山上さんは、今どんな想いでいるのだろうか。
事件の「評価と量刑」
「私は弁護士として企業法務を中心に扱う法律事務所を経営してきました。法律家としての観点からお話ししたいと思います。
判決とは事件に対する『評価』です。『目には目を』という報復的な発想にならず、事件の意義にまで踏み込んだ評価でなければならないと考えています。
評価とは、つまり量刑です。日本の刑法では被害者1人に対する殺人罪の刑罰は懲役20年から30年です。やむを得ない事情があった場合の緊急避難や正当防衛が成立すれば無罪もあり得ます。
事件によって、旧統一教会の反社会性が世間に認知されました。安倍氏がその関連団体にエールを送っていたという事実は許されざるものです。安倍氏以外にも多くの国会議員がこの反社会団体とタッグマッチの関係にあったことも明らかになりました。安倍氏は何の落ち度もない被害者とは言い難く、その点は斟酌すべきだと思います。