東京六大学野球春季リーグでは、早稲田大学が慶應義塾大学を破り、7季ぶり47度目の優勝を果たした=2024年6月2日、東京都新宿区
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 箱根駅伝、東京六大学野球──。大学の知名度アップに欠かせないのが大学スポーツだ。しかし運動部の学生の選抜や学業との両立などの実際はあまり知られていない。AERA 2024年7月8日号より。

【UDL運動部学生アンケート結果】運動部学生の「入学事情は」こちら

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「2021年から大学入試方法が見直され、スポーツ推薦という言葉を使わなくなりました」

 大学スポーツ協会(UNIVAS)専務理事の池田敦司さんはそう話す。UNIVASは大学スポーツに取り組む学生を支え、社会に貢献できる人材の育成に取り組みつつ、安全で安心なスポーツ環境の整備、大学ブランドの強化を目指す組織として2019年に設立された。UNIVASによると、大学への入学方式の多様化により、運動部の学生に限定すると一般選抜で入学するのは4分の1にも満たず、約6割が総合型選抜と学校推薦型選抜で入学していることがわかった。

競技と学業の両立支援

「体育会は学校法人の組織の外にあり、学生の自主性も尊重されています。大学にはスポーツに秀でた学生を確保したい意向もありますが、少子化による大学間競争も厳しくなっています」と池田さん。

「大学が入学のためのセレクションをしている場合はそこに参加することは必須です。また何らかの方法で自分の情報を大学に届くようにすることも一つの手段です」(池田さん)

 UNIVASのアンケートによると入学した運動部の学生は練習や試合だけではなく、3分の2の学生は授業にほぼ100%出席している。しかし、80%の学生が授業の理解度に自信を持ち得ていないことも判明した。

「そこでUNIVASは大学運動部の学生にデュアルキャリア支援プログラムを提供しています。これは大学入学前の高校3年時から就活にいたるまで運動部の学生の競技と学業の両立を支援するものです」

 運動部の生徒は高校3年の秋には進学先が決まり、学習から離れがちになる実態がある。このプログラムは大学での学びの準備と学業への興味を喚起して基礎学力の向上を目指し、何を、どう学ぶかなどを教えている。また、自らのスポーツでの経験の棚卸しをさせ、ことばで表現させることで、スポーツの技術力向上の基礎にもなり得る言語化能力を高める狙いがある。そのための教材を河合塾グループのKEIアドバンスと共に開発している。

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