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 AIによって大きく変化するであろうこれからの社会を生き抜くには何が必要か。人工知能研究者・川村秀憲氏は、大切なのは身の回りの環境や、当たり前の状況を疑う思考だという。著書「10年後のハローワーク」(アスコム)から一部を抜粋して解説する。

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 この先、AIの進歩によって社会は変わり、仕事や職種にも大きな影響を与えることは必至です。当然、働き方も、働くことに対する考え方自体も、根本的に変わっていきます。
 

変化のなかで生き抜くためには

 そして、変化していく社会を「生き抜く」、あるいは変わっていく働き方のなかで「生き残る」という言葉を使うのなら、大きな変化に対応できた人こそ、「生き抜く」ことができ、「生き残る」ことになるのではないでしょうか。

 そのためには、これまでと異なる「思考」が求められます。それは、身の回りの環境、当たり前の状況を疑えるかどうか、つまりは「いま」を疑う力を持っているかどうかです。「いま」の常識のどこが疑わしいのか、AIがやってきたあとの世界を、私たち「生身の人間」はどう生き抜くべきなのかを中心に、少し頭を柔らかくしながら考えていきましょう。

 AIの驚くべき進歩と、今後の社会にもたらす影響を考えるたびに、思い出す本があります。

 『チーズはどこへ消えた?』(1998年、スペンサー・ジョンソン著/邦訳版 2000年、門田美鈴訳、扶桑社)という、非常に有名な「ビジネス絵本」です。全世界で3000万部近くが売れ、最近では大谷翔平選手が愛読していることでも改めて知られています。

 チーズが隠された迷路で、2匹のネズミと2人の小人が大量のチーズを見つけます。ネズミたちは毎朝、家から走ってチーズを食べに行きますが、小人2人はチーズの近くに引っ越し、お昼に起きてゆっくりとチーズを食べに行きます。毎日食べ続けていたので当然のことですが、ある日チーズはなくなってしまいます。そこでネズミたちは新たなチーズを探しに行きますが、小人たちはチーズがなくなったことを認められず、現状に固執して、チーズが戻ってくるのを待つ……というお話です。

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川村秀憲

川村秀憲

かわむら・ひでのり/人工知能研究者、北海道大学大学院情報科学研究院教授、博士(工学)。ニューラルネットワーク、ディープラーニング、機械学習、ロボティクス等の研究と併行して、ベンチャー企業との連携も進めている。著書に『10年後のハローワーク』(アスコム)がある。

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チーズはどんどんとすり減る