「原作のストーリーを、そのまま1~2時間の尺(時間)には落とし込めないんです。漫画のコマで面白いものでも、映像となるとその面白さが通じないこともしばしばあります。漫画とテレビでは伝え方が違いますから」
そして、出演者の所属事務所との関係性も影響するという。
「芸能事務所との関係で、こっちの俳優の尺はこれ以上削れない、といった問題が出てきます。必ずしも原作者の希望通りに現場が動けるとは限らないんです」
と打ち明け、こう話した。
「脚本家やテレビ製作陣らの仕事は、原作者と話し合って、盛り上げどころを決めたり、尺に合わせて取捨選択をしたりすることです」
原作者と制作側とのこうしたトラブルを避けるために、契約時に大きな役割を担うのがライツ業務だ。出版社側が、原作を映像化・商品化するときの窓口業務を担い、契約交渉や著作物の複製や販売についての権利などの管理を担う。
原作者が脚本を書くのは異例中の異例
都内の出版社でライツ業務を担当する男性(40代)は、
「原作者が脚本家に修正の依頼をすることは多々ありますが、ドラマの途中から脚本家の代わりに原作者が脚本を書くというのは異例中の異例。これまで聞いたことがありません」
と指摘する。
漫画が実写化される際、出版社が原作者の代理人としてテレビ局などと契約書を結ぶ。前出のライツ担当の男性によると、契約の際に最も注意を払うのは「著作者人格権」だという。著作者人格権とは、著作権の一部であり、著作物で表現された内容、キャラクターに対しての名誉権などを指す。
原作者の思い入れなども対象となり、作品内の登場人物のキャラクター性なども含まれる。例えば、原作ではおとなしい性格のキャラクターが活発になっていたり、派手になっていたりした場合などは、その権利が侵害されたということにもなる。そのためライツ担当者は、契約時に著作者人格権が侵害されていないか特に注視するという。
また、原作者と脚本家との間には、漫画の担当編集者やライツ担当、テレビ制作陣や脚本マネジャーら多くの人が介在する。そのため、互いの主張が伝言ゲームとなり、適切に伝わらないこともしばしばあるという。