都の選管は「前代未聞の事例」
男性がポスターを掲示するためにかかった費用は55万4040円。内訳は、①ポスターを1カ所貼るのに1万円の寄付(=36カ所のため、計36万円)、②貼り出しの作業代が税込みで1カ所3300円(=36カ所のため、計11万8800円)、③ポスター900枚の印刷代に7万5240円、だった。男性は「今後はポスタージャックはできなくなるかもしれない。1回だけのチャンスと考え、今回はできる限りの出費をしました」と話した。
都選管によると、6月21日(告示日の翌日)までに、選挙ポスターについての苦情が1200件以上寄せられたという。選挙ポスターの意義を問うものが多く、全裸写真ポスターなどについては「ポスターをはがせ」などの意見もあったという。都の関係者は「今も選管は電話が鳴りやまない。他部署から選管に電話してもつながらないことがある」と打ち明ける。
男性が加担した“ポスタージャック”についても苦情はあるのか。担当者は、「前代未聞の事例です」と述べたうえで、「公職選挙法違反があれば、警察が対応します」とだけ答えた。苦情件数については「まだ集計が出ていないのでわからない」とのことだった。
一部のポスターが警視庁から警告を受けていることについて、男性は「公序良俗に反しない、誹謗(ひぼう)中傷をしない、事実と異なることを示さないなどのルールは守られるべきだ」とした上でこう答えた。
「ポスター枠は候補者に使用の権利が与えられている以上は、ルールの範囲内であれば候補者の自由に使わせてあげればいいのでは。候補者が自らの意思で使わない自由も尊重するべきかと思います」
都知事選の選挙ポスターをめぐっては、よく「表現の自由」「選挙活動の自由」がうたわれるが、それが本当の意味で「自由」を守ることにつながるのか、われわれはよく考えるべきだろう。
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)