職業にはならなくても「好き」をあきらめない。そんな「好き」との付き合い方もあっていい。社会人になってもお笑いに情熱を注ぐ人たちの奮闘に迫った。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。
【写真】調布市役所で人事課給与厚生係長として働く青木祥悟さん
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「半分冷やかしの気持ちで見てみたら意外に面白くて悔しい」
「これ許可した調布市いいな!!」
こんなコメントが並ぶのは、東京都調布市が2月にYouTubeで公開した市のPR動画。手掛けたのは市の人事課給与厚生係の青木祥悟係長(35)だ。
青木さんは「学生時代に落語研究会に所属していた市職員」という設定で出演。上司からユニークな方法で職員募集を呼びかけるよう頼まれ、調布市育ちのYouTuberオックンこと奥山慶久さん(29)と漫才を披露して好評を得る、という10分足らずのストーリーだ。見どころは、上から読んでも下から読んでも同じ言葉になる「回文」を次々繰り出すシーン。青木さんの立て板に水のセリフ回しにうならされる。
「動画を見て、『こんな市職員もいるんだ』という感想にとどまらず、『社会人になってもお笑いを続けていいんだ』って考える人が一人でも増えればうれしいです」
■好きな芸を自由に探究
こう話す青木さんは「社会人芸人」のさきがけの一人。お笑いと本格的に向き合ったのは2006年。明治大学のお笑いサークル「木曜会Z」に入部した時だ。青木さんの芸名は「アオキプラン」。1年後輩の相方が「たま・ハヤカワ」。学生時代に2人が組んだ漫才コンビ「たまプラーン」は、ワタナベコメディスクール主催の「大学生お笑いアマチュア選手権大会」で優勝。ハライチやハナコ、四千頭身などが輩出しているプロへの登竜門を通過し、お笑い芸人の養成所「ワタナベコメディスクール」の特待生として1年間通った。が、プロデビューはしなかった。思いとどまったのは、大学4年生の時に「M-1グランプリ」に出場し2回戦で敗退したことと、養成所内のライブコンテストの順位が低迷するようになったことが大きいという。