ウェブメディアは百花繚乱だ。ただ栄枯盛衰が激しく、浮き沈みのエピソードは事欠かない。成長しているウェブメディアは、いったい何が違うのか。
データアナリストで、コンテンツ編集支援サービスなどを行う「ストリーツ」(東京)代表の田島将太さんは、「大前提として、スクープやそこでしか読めないなど独自性のあるコンテンツを持っている」として、「届け方がうまい」と評する。
「ウェブで読まれやすいタイトルをつけたり、関連記事に誘導したり、記事の内容によって公開する時間を変えたり。地味ですが、そうしたことの積み重ねで、驚くほど読者への届き方が変わってきます」
読者の心理状態を理解
田島さんは2020年に文春オンラインのコンサルティングを手掛けた。その際、田島さんが構築したのが、記事分析の「ダッシュボード」だ。
読者の性別・年齢層・端末・地域・訪問頻度・続けて読んだ関連記事……。それらをパソコンのダッシュボードに集約。視覚化するため、ダッシュボードはできるだけグラフで表示した。
編集者はダッシュボードにアクセスし、常にデータの分析を行う。そうすることで編集者のセンスは研ぎ澄まされていき、次は何時にどのような記事を配信すれば読まれるのか、読者の心理状態まで考えて発信できるようになる。読まれている記事が分かれば同じテーマを深掘りし、多方面から記事をつくることなども可能になる。こうして記事を洞察するデータカルチャーができ上がっていったという。
「もちろん、配信した記事が毎回全て当たるとは限りません。ただウェブメディアは1日に公開する記事本数が多いので、完璧でなくとも6、7割の確からしさの分析を繰り返し行うことで洞察力がついていきます。逆に言えば、成長できないウェブメディアは、読者の心理状態についての理解が少し浅いことが多いと思います」(田島さん)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年6月24日号より抜粋