炭治郎。アニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編 第2弾キービジュアル解禁PVより。(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

炭治郎の運命と「柱」との関係

 では、「日の呼吸」以外の「呼吸」は何のために必要なのか? ただの派生でしかないのか? それはちがう。「ヒノカミ神楽」が真の威力を発揮するためには、自然界のあらゆる力の助けが必要となる。

 ある雪の日、冨岡義勇(水柱)が炭治郎を救った。胡蝶しのぶ(蟲柱)は鬼を激しく憎みながらも、炭治郎を治療し、鬼の禰豆子を許し、竈門兄妹を癒した。これまでともに戦ってきた、宇髄天元(音柱)、甘露寺蜜璃(恋柱)、時透無一郎(霞柱)。これから共闘を果たすことになる、悲鳴嶼行冥(岩柱)、不死川実弥(風柱)、伊黒小芭内(蛇柱)。そして、炭治郎の心を温かく燃やし続ける「煉獄さん」(炎柱)。

 この世界は「太陽」だけでは成り立たない。炭治郎が生き残り、「日の呼吸」を「ヒノカミ神楽」として再生していくためには、やはり柱たちの助力が重要なのだ。鬼殺隊の9人の柱は、「日の神の力」を守り、支えるために存在している。そして、炭治郎は柱になるのではなく、鬼を滅殺する縁壱の力を、太陽のパワーを、わが身に宿すために、その依代(よりしろ)にならねばならないのだ。ここにこそ、炭治郎が柱に“ならない”理由が隠されている。

 今後、柱稽古で炭治郎はどこまで強くなるのか、鬼滅ファンと一緒に見守りたい。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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