日本史を揺るがし、颯爽と去っていった快男児、平将門を祀る神田明神。
江戸の中心に位置するこの神社が、庶民からの多大な信仰を集めた背景には、神社そのものの成り立ちの秘密がありました。
神田明神はいかにして成立したのか、祀られる神様とそのご利益は何か。
前回に引き続き、ビジネスパーソンであれば絶対押さえておきたい、
首都圏のパワースポット・神田明神の秘密に迫ります。

例年30万人もの参拝客で賑わう神田明神の初詣
例年30万人もの参拝客で賑わう神田明神の初詣
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江戸の裏鬼門を守護する拠点?

「関が原の戦い」つまり、徳川家康の戦勝をきっかけに神田明神が現在の地に移されましたが、実は、もうひとつ理由として風水学に関わっているという噂もあります。
実は、江戸の街は風水の考えをもとに都市設計がなされていたのです。かつての江戸城、現在の皇居を中心として、鬼門・裏鬼門、つまり鬼が出入るする場所に当たるところに神社や寺院が置かれました。
江戸城を築城した武将の太田道灌は、兵法家であり陰陽五行の理に通じていたといわれます。道灌が風水的に最もよいと判断した土地に江戸城が築かれ、その後、徳川幕府に仕えた天海僧正が、易学の見地から都市の配置を行ったのです。
そのような意図のもと、江戸城の鬼門にあたる東北方に寛永寺が、裏鬼門に当たる場所に、日枝神社と神田明神が移築されたそうです。江戸総鎮守という役割には、江戸の弱点である“鬼門”を守るという意味も含まれていたのでしょう。

勇ましい二体の随身像がエントランスを守護する
勇ましい二体の随身像がエントランスを守護する

祀られている3つの神様とそのご利益

江戸の裏鬼門にあたる神田明神には、三柱の神様が祀られています。それぞれの神様には、どんなご利益があるのでしょう。
一之宮:大己貴命 (おおなむちのみこと)
通称“だいこく様”。出雲大社に祀られている大国主命(おおくにぬしのみこと)と同一の神であり、大いなる大地を象徴します。国土開発、夫婦和合、協調、福徳円満、縁結びのご利益があるとされ、男女の仲だけでなく万物の縁を結んでくれるとも言われます。
二之宮:少彦名命 (すくなびこなのみこと)
大己貴命の国作りのパートナー神であり、“えびす様”の正体であるとも言われます。手のひらに乗るほどの小さな神様ですが、商売繁昌、知恵向上、医薬健康、開運招福のご利益をもたらします。
三之宮:平将門命 (たいらのまさかどのみこと)
武士の先駆けであり、兵(つわもの)として、関東地方の政治改革を行った人物です。権力に屈しないその姿勢から、東国の人々にとっては大ヒーローでした。朝敵とされ討死してしまいますが、その後、大いなる神様として祀られます。厄除け、勝負運、リーダーシップ力、政治力などにご利益があるとされます。

“だいこく様”として親しまれるご祭神の大己貴命
“だいこく様”として親しまれるご祭神の大己貴命

詣でる際にやってはいけないタブーとは?

巷の噂では、神田明神を詣でる際にやってはいけない事があるそうです。それは、同じ年に成田山新勝寺とともに参拝することです。
なぜ神田明神と新勝寺をいっしょに参拝してはならないのでしょうか? そこには、昔の日本人の神様に対する配慮がありました。
歴史的に見ると、平将門は朝廷に対して叛乱を起したことになっており、その乱を鎮圧するために、さまざまな処置がなされました。その一つとして、神護寺の不動明王を下総国(現在の千葉県)に運んで行われたのが、成田山新勝寺での大規模な護摩祈祷だったのです。
かたや人々を率いて、権力に果敢に立ち向かった平将門を祀る神田明神。かたや朝廷の権力のもと、逆賊の鎮圧と泰平のための祈祷を行った成田山新勝寺。この二つの神社の由来はまったく逆の意味をもっており、同時に参拝するのは、少し軽率なのかもしれません。
初詣でいくつかの神社を参拝される際には、神様と神様の関係についても気をつけたいところですね。

同時に参拝してはならないとされる成田山新勝寺
同時に参拝してはならないとされる成田山新勝寺

“仕事運”にかかわる多様なご利益!

神田明神の人気の秘密は、さまざまなニーズに対応した多様なご利益。縁結びや福徳円満、医薬健康、開運招福など、ひととおりの願いは受け入れてもらえます。
商売繁盛、事業成功、商談成立、社運隆盛など、ビジネス街の神社らしい、“仕事運”を上げるご利益の数々も充実しています。日本史の優れたリーダーである平将門にちなんだ、勝負運、リーダーシップ力などのご利益も!
年始を新たな気持ちで臨みたいビジネスパーソンにとっては参拝しがいのある神田明神。ときに祟りの噂が出るほど強力な力をもつ“平将門”に手を合わせ、来年はビジネス界の風雲児となりましょう!
【神社情報】
神田明神
東京都千代田区外神田2-16-2
中央線・総武線 御茶ノ水駅(聖橋口)より徒歩5分
京浜東北線・山手線 秋葉原駅(電気街口)より徒歩7分

  参拝客が列をなす正月三が日の神田明神
参拝客が列をなす正月三が日の神田明神