男性社会の中で感じてきた理不尽やモヤモヤ。女性管理職が増えると、組織を良い方向に変えることができる可能性がある(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 負担が大きくなることから敬遠されがちな管理職だが、実際になってみると仕事がやりやすくなるケースもあるようだ。管理職に就いてより生き生きと働く40代女性の事例を紹介する。AERA 2024年6月17日号より。

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「自分が味わってきた気持ちを解消できるポジションにきた。希望の光が見えた」

 都内の不動産会社に勤める女性(40)は、管理職に就いた時の思いをそう振り返る。

 勤務先の経営層は全員男性で、入社してからの上司もすべて男性だった。女性は20代後半で出産。その時、上司からかけられた言葉は「君ならできるよ。なんとかなる」。そう言われると「なんとかなるかな」と思い、復職後に主任となって「管理職ロード」を歩み始めた。

 だが、「自宅に戻ると現実が待っていました」と笑う。仕事も育児もどっちつかずになっているように感じ、罪悪感や焦燥感がつきまとった。周囲の女性社員は育休後に復職しても、しばらくたつと辞めていくケースが少なくない。課長職を打診されたときには自分に務まるのだろうかと悩んだという。だが、そんな時、足を運んだ勉強会でジェンダーの専門家の女性に相談すると「自分が管理職になって変えていけばいい」と言われ、「目から鱗が落ちた」。

 3年前に課長になると、同時期に課長になった女性の同僚と「このままじゃ、まずいよね」と話し合った。退職していく若手のことを伝えても、男性経営陣は「みんな、いろいろ事情があるからね」と楽観的だ。「私たち2人だけの声では届きにくい。深刻な問題だということを伝えるためにも数の力が欲しかった」。慎重に根回しをしながら社内に「女性活躍推進プロジェクト」を立ち上げた。

 社外のダイバーシティー勉強会にも顔を出し、様々な企業の参加者から話を聞いた。社内で理解が得られずに心が折れそうな時にも、社外に仲間がいると思えて心強かったという。勉強会で聞いた話を参考にして、社内でもメンター制度を導入。「女性が気持ちよく働ける環境=全社員が気持ちよく働ける環境」という認識のもと、対象には性別による制限を設けなかった。

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