エラ・グレンディニングは股関節がなく大腿骨が短い、まれな障害のある女性だ。2018年に彼女はSNSを通じて自分と同じ障害のある人を探すセルフドキュメンタリーを撮り始める。そんな矢先、パートナーとの子を妊娠していることがわかり──。サンダンス映画祭ほかで話題となった作品「わたしの物語」。監督も務めたエラ・グレンディニングさんに本作の見どころを聞いた。
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滅多にない体を持っている自分の経験を映画にしようと思ったんです。障害者への差別(非障害者優先主義=エイブリズム)について表す意味もありましたが、なにより障害のある人々を祝福するような映画を作りたいと思いました。
私は幼少期から人に「自分と違う」という目で見られたり、扱われたりすることに苛立ちを感じていました。ときに笑われることもあり、つらい部分もありました。その経験を経て自分を受け入れることができたのは、両親がずっと私を受け入れてくれていたこと、そして他の障害者と接するようになったからです。特に18歳ごろから始めたSNSは世界を大きく変えました。実は先日、5歳の息子が自閉症だと診断されたんです。少し驚きましたが、これから息子も自分と似た人をSNSで探し、繋がることができるかもしれないと楽しみにも感じています。
本作を撮ったことで、私自身にも自分を否定する部分があったことに気づきました。息子の出産時に自然分娩を強く望んだのですが、それは自分が健常者と同じだと証明したかったからだけだったんです。幼いころ主治医が言ってくれたことを思い出しました。「普通」なんてものはなくて、みんな一人一人が違うんだよって。
いまも障害者差別は根強くあります。あからさまに悪口を言う人もいますが、同じくらい傷つくのが無意識の差別です。ある建物に物理的に入れないとか、「できないだろう」と決めつけられて仕事に就くことが難しいなどです。ただ変化も起こっていると感じます。
ある上映の後に障害者の方が来て「感動した。障害者をこんな風に描いてくれるなんて、自分の夢が叶ったようだ」と言ってくださったんです。本当にこの映画を作ってよかった!と思いました。
(取材/文・中村千晶)
※AERA 2024年6月17日号