自分に何ができるかはわからないけれど、私にできることはしていきたい、と勝手ながら思うことはあります。千紗子は、他人が違和感を覚えることも自らの判断で進め、行動を起こす存在として描かれていて、それはなかなかできないこと。自分だったらどうするのだろう、と観ている方も思うことはあるのではないか、と思います。
――なかでも、ラストの表情は強く印象に残る。
杏:演じるまではどんな感情になるのか、自分でも想像できませんでした。背中をツーッとつたうものがあるというか、決してわかりやすい喜怒哀楽で終わるわけではないんですね。親子愛の話かと思ったら、意外とミステリーのような要素も多いな、と。ラストは息子役の中須翔真君がどのようなトーンでセリフを口にするかでリアクションも変わると思いましたし、私も私で何度もできるお芝居ではなかったので、「絶対に失敗できない」という気持ちがありました。
(構成/ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2024年6月3日号より抜粋