イチローが海を渡った2年後の2003年にメジャーに挑戦した松井は『MLB.com』のプロフィールで調べると、身長6インチ2フィート(約188センチ)、体重210ポンド(約95キロ)。“ゴジラ”の愛称があったように日本人としてはかなり大柄な部類だが、メジャーリーグでは松井も標準的な体格だった。また、イチロー、松井が米国でプレーし始めた時期は現地で“ステロイド時代”という呼び名があるように、運動能力を向上させる薬物を使用している選手が多かったタイミング。筋骨隆々のメジャーリーガーたちがあふれる中で、イチローの細さはより際立っていた。

「あの時代に米国でプレーしたイチローがあれだけの結果を残したのが凄い。身長180センチは一般的な日本人と少し大きいぐらいの体型。相当の覚悟を持って取り組んでいたはず」(在米スポーツライター)

 パワー全盛の時代で、技術とスピードを生かしたプレーでリーグを席巻したイチローは引退後の今もなお、その功績を評価する声は多い。なお、イチローがマリナーズに移籍した2001年から10年連続でシーズン200本安打以上とゴールデングラブ賞受賞を達成したが、その間の野手としての通算WAR(選手の価値を総合的に示す指標)はリーグ全体で3位だという(WARのデータは米スポーツメディアの『bleacher report』を参照)。

 細身のイチローが大柄な選手たちの中で躍動する姿は、二刀流で成功した大谷と同じくらい米国の野球ファンにインパクトを与え、そのプレーの凄さは数字にも表れている。

 そんなイチローが屈強な選手たちの中で戦えたのは技術はもちろん、自身の体を知りつくしていたことにあるだろう。現役時代に最も大事にしたのは柔らかくて強い筋肉と関節可動域の広さだという。当時、日本では馴染みのなかった初動負荷トレーニングを早くから取り入れ、専用機器を自宅や本拠地球場へも持ち込んだのは有名だ。

オリックス時代から自身の体を徹底研究して長所と短所を熟知していた。自分自身に必要なトレーニングのみを取り入れ、その他のことはコーチに言われても絶対にやらなかった」(元オリックス担当記者)

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