和ろうそく大與 4代目当主・和ろうそく職人 大西巧(おおにし・さとし)/1979年生まれ、滋賀県出身。立命館大学経済学部卒業後、線香メーカーを経て家業の大與に入社。2014年、創業100周年を機に代表取締役就任。伝統的工芸品産業大賞若手奨励部門奨励賞受賞。2児の父(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年5月27日号には和ろうそく大與 4代目当主・和ろうそく職人 大西巧さんが登場した。

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 芯が太く、ふっくらとした灯りを生み出す和ろうそく。一般的に、洋ロウソクが石油系の原料、糸でできた芯で細い灯りになるのに対し、植物性の原料が主体で、芯に和紙を使う。そんな和ろうそくの中でも、「国産・天然の植物蝋100%」のみを扱う。

 就職活動中に父の話を聞き、4代目として継ぐ決心をした。

 高度経済成長期、業界全体で安く大量に作るのが主流となり、混ざり物で質が落ちた。きれいに燃える品質を求めた父は創業時と同じ、櫨(はぜ)の実から採取した原料100%に戻した。価格は上がるが「これであかんかったら蝋燭屋を辞める」覚悟で。蝋の垂れや煤がほぼ出ない質の良さで信頼を得て、家業の灯火を守った。

「このろうそくで僕ら育ててもらったと思ったら感動して、ほなやってみよかなって」

 生活様式の変化で従来の需要が減る中でも、継いだ当初から「これで食べていく」と揺るがなかった。持続可能な米ぬかに着目し、プロデュースした「お米のろうそく」は2011年グッドデザイン賞特別賞を受賞。原料を知ろうとする人の意識を喚起した。

 関心を呼ぶ一方、主な取引先であるお寺の財政難の煽りで売り上げの柱が揺らぐ。活路を求めて海外市場の拡大へ。大きな投資を伴う決断に、質素な経営を重んじる父は反対したが、弟が背中を押した。

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