大型の蜘蛛鬼をあっさりと倒した義勇は、それに苦戦した伊之助を救いながら、厳しい言葉を口にした。義勇は後輩剣士たちの無謀な戦い方を好まない。鬼との戦闘は命の取り合いになるため、「引き際」をどこにするかの見極めは、剣士としての大きな資質のひとつとなる。その点で、義勇の発言はもっともなのだ。しかし、苦言を呈したはずの当の伊之助からは、「聞こえねぇよ!! 速ェんだよ 歩くの!!」と叫ばれており、義勇の有益なアドバイスは、伊之助にはちゃんと届かなかったようである。
このように、義勇は「相手に届くように伝えること」に頓着しないため、ときおり、他の柱からも誤解され、軋轢を生んでしまうことがある。実は、こうした義勇の態度は、相手をバカにしているのではなく、自分がいかに周囲から重視されているのか、頼りにされているのかという視点が欠落していることが原因になっている。
■蟲柱・胡蝶しのぶからの風当たり
蟲柱・胡蝶しのぶは、とくに義勇への“当たり”が強い。しのぶ自身、鬼滅の登場人物の中ではトップクラスの毒舌キャラであるため、ふだんはクールな義勇も、しのぶには自分のペースを崩されてしまう。しのぶから「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」とまで言われ、「俺は嫌われてない」と否定はしたものの、「嫌われている自覚が無かったんですね」とたたみかけられて、絶句している。
当然のことながら、実際にしのぶは義勇を「嫌われ者」と思っているわけではない。説明不足のまま独断で走りがちな義勇に対して、「どういうつもりなんですか?」「なんとかおっしゃったらどうですか?」「冨岡さん 理由を説明してください」「さすがに言葉が足りませんよ」と、何度もしのぶは義勇の意見を聞こうとしている。それは水柱・冨岡義勇に対する、絶対的な信頼が根底にあるからだ。
■水柱・冨岡義勇と他の柱たち
義勇が他の柱たちと大きくもめたのは、緊急事態時に招集される「柱合会議」のシーンだ。「鬼の妹を連れて歩く竈門炭治郎の処罰」でもめた時(コミックス6巻)、そしてその次は、「柱たちの中に特殊なパワーの顕現である“痣”が浮き出た者」があらわれた時(同15巻)だ。どちらも「鬼殺隊」の根幹に影響を与える“大事件”である。